税務調査とは、確定申告の申告内容や納税状況を確認するために行われる調査のことです。法人、個人事業主のどちらも対象になりますが、なんとなく怖いイメージを持っている人も多いと思います。
そこで今回は、税務調査の概要、税務調査の対象になりやすいケースについて解説していきます。
税務調査とは?
「税務調査」は個人事業主や法人に対して行われるもので、過去に納税した金額が本当にあっているのかをチェックするための調査です。調査があった後、申告内容に誤りがあることがわかったら、修正申告を求められることがあり、場合によっては追加で税金を納めることが必要になります。
税務調査は、大きく分けて「任意調査」と「強制調査」の2種類に分類されます。
任意調査
税務署が事前に納税者に通知し、合意のもとで実施される調査で、務調査のほとんどがこれに該当します。一般的には事前に電話で通知があり、決められた日程で2日間ほどかけて、税務署職員が事務所や自宅を訪問し、収入の計算や、必要経費の適切な控除、申告の正確性などを確認します。
「任意」とありますが、実際には協力に応じないといけません。拒否したり、正当な理由もなく帳簿を見せなかったりすると、罰則があるので注意しましょう。
強制(犯則)調査
強制(犯則)調査は、脱税などの重大な税法違反が疑われる場合に行われ、納税者の同意を得ることなく強制的に実施されます。執行するのは国税局の担当者です。
裁判所の許可状に基づき、税務署担当者が事務所や自宅を訪問します。書類や帳簿を強制的に確認することができます。この調査で脱税が発覚すると、刑事告発に発展する可能性がありますが、強制調査は稀なケースです。
税務調査が行われる時期
こうした税務調査には正式に決まった時期はありませんが、一般的には確定申告が終わった頃の3〜4月、また、国税局や税務署の人事異動が終わる7〜11月が多いと言われています。
税務調査が行われる確率
税務調査がどの程度の確率で行われるかは、個人事業主と法人で異なります。調査対象となる確率は、法人の場合で約3%、個人事業主だと約1.5%ほどです。法人の方が調査対象になる確率が高い傾向にあります。
税務調査が入りやすい法人・個人事業主の特徴は?
所得や申告内容、業種などのさまざま条件によって、税務調査の対象になる可能性は違ってきます。税務調査の正式な基準は一切公表されていませんが、一般的に言われているのは次のような特徴を持つ法人または個人事業主です。
売上が急増している
創業したばかりの頃、または、これまでずっと売上が少なかったのに、ここ1〜2年で急激に売上が増えているという場合、税務調査の対象になる可能性があります。売上が急増した裏には、何か(悪い)理由があるのでは? と推察されてしまうからです。
また、売上が多い事業者であれば、申告漏れの額も大きくなると思われるので、それを指摘することでより多くの追徴課税を得ることができます。
こうした理由から、赤字の会社より黒字の会社の方が対象になりやすい傾向にあります。
売上に対してわずかな利益、という状況が続いている
特に個人事業主に多いのですが、売上に対して利益が少なすぎるのも調査の対象になりやすいです。
特に売上高は1000万をわずかに下回り、課税事業者にならなくて済むような申告が長きにわたって行われている場合は、消費税の納税を逃れようとしているのではないかと疑われて、税務調査の対象になる可能性が高くなります。
申告漏れが多い業種業態である
主な事業として行われている業種が、申告漏れが多い業種である場合も、税務調査が入る確率は高まります。国税庁は、税務調査の状況をまとめた資料を毎年公開していますが、中には申告漏れ所得額が大きい業種ランキングも掲載されています。
年度によってランキングは入れ替わりますが、経営コンサルタント、システムエンジニア、不動産代理業、キャバクラ、太陽光発電、飲食業、建設業、宗教法人などの業種は他の業種よりも 調査に入る可能性が高くなっています。
現金商売をしている業種も注意が必要です。
申告内容に不審な点がある
経理上の数値に不審な点がある場合も、税務調査に入られやすくなります。
「前年度と比較して買掛金や未払金が激増した」
「勘定科目に大幅な変更があった」
「賃借対照表の項目に異常な数値があった」
「退職金や貸倒損失など、大きな一時損失があった」
「仕入れ販売を行っている事業なのに、棚卸資産が全くない」
こうした特徴がある場合は、帳簿上で不審な点があると判断されるので注意しましょう。
まとめ
今回は、税務調査とはそもそも何なのか、どんな会社が対象になりやすいのかについて解説しました。法人なら約3%、個人事業主なら1.5%という確率ではありますが、税務調査は誰にでも可能性があるものです。
税務調査が入ることになった場合、顧問税理士がついているのであれば、当日の立ち会いをお願いできるケースがほとんどです。帳簿や資料の準備、当日の税理士対応も一緒に行ってくれます。
また、日々の帳簿記入についても日頃から相談しておけば、帳簿の不備で税務署にチェックされることが少なくなります。法人なら特に、また個人事業主であっても、顧問税理士と契約しておくことで不要な課税を避けられますので、ある程度の事業規模になってきたらぜひ顧問税理士と契約を結びましょう。
特に専門性が高い、節税対策や資金調達については、適宜アドバイスを受けながら進めていくことで、安定的な経営につながると思います。
執筆者紹介
- 東京都町田市生まれ、神奈川県相模原市在住。
慶應義塾大学商学部卒
大学卒業後、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)勤務を経て
平成27年独立開業。
相模原地域を中心に、多くの企業の会社設立を支援。多数の講演実績。
出版書籍に
「会社と家族を守る事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46」
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