税務調査とは、法人や個人事業主が正確に税務申告を行っているかを確認するために行われるものです。調査が実施される場合は税務署から事前に連絡がありますが、「何が行われるのだろうか」「怪しまれているのだろうか」など不安に感じることも多いため、経営者にとっては心理的な負担が大きくなります。
そこで今回は、いつ税務調査があっても準備できるよう、税務調査の一般的な流れと、対応のポイントについて解説します。
税務調査は事前に通知される
税務署が税務調査に来ることを決めた場合、事前に通知がされます。現在、事前通知は基本的に電話で連絡されることが多いようですが、連絡が取れない場合は税務署の判断によって書面で通知がされることもあります。
税務調査の進め方は法律で定められていて、税務署からは以下の要件が伝えられることになります。
1.実地の調査を開始する日時
2.調査を行う場所
3.調査の対象となる税目
4.調査の対象となる期間
5.調査の対象となる帳簿書類
6.調査で訪問する調査官の氏名と所属
7.その他調査の円滑な実施に必要なもの等
不明点があれば税務署に直接問い合わせることも可能です。また、税務代理権限証書を提出している税理士に対しても同様に通知が行われるので、顧問税理士と契約している方は、税理士とやりとりをして当日に向けて準備をしておきましょう。
なお、税務調査は余程の理由がない限り、拒否することはできません。
税務調査当日の流れ
税務調査は原則として、事業所や事務所で行われます。調査を担当する調査官は、帳簿や決算書、領収書などの資料を確認し、不明点について質問を行います。
挨拶と概要説明
調査官が訪問し、自己紹介と調査の概要について説明します。この際、調査の目的や重点的に確認する項目についても言及されることがあります。
資料の確認
調査官は、事前に通知された帳簿や資料をチェックします。具体的には、以下のような資料が確認されることが一般的です。
- 総勘定元帳や仕訳帳
- 売上台帳、仕入台帳
- 領収書や請求書、契約書
- 銀行通帳や資金繰り表
また、これらの資料の普段の管理方法について聞かれることもあります。保管場所や保管方法、どのくらいの頻度で更新しているのかを質問されたというケースもあります。
質疑応答
資料を基に事業活動や取引内容について質問されます。取引先との具体的な取引内容、収益の計上タイミング、経費の適正性(経費が何に使われたものなのか、業務上必要なものなのか)を聞かれることが多いようです。
税務調査が終了したら
調査が終了すると、調査官からその結果について説明があります。この時点で問題点が見つからなければ「是認」となり、追加の対応は不要となり、調査は終了です。
ただし、申告内容に修正が必要と判断された場合、以下のような手続きが行われることになります。
修正申告の依頼
申告内容に誤りが判明した場合、調査官から修正申告を求められます。売上や所得が低く見積もられていたと判断されたのであれば、追加の税金や延滞税、場合によっては加算税を支払う必要がでてきます。
更正通知の発行
納税者が修正申告に同意しない場合、税務署が更正通知を発行することになります。これに対して不服なのであれば、異議申立てや審査請求を行うことも可能です。
税務調査 事前準備のポイント
税務調査に備えるためには、普段から適切な帳簿管理を行っておくこと、そして正確な申告を行うことが大切です。
帳簿や資料の整理
帳簿は税務調査の基礎資料です。常に正確で整然とした状態に保ちましょう。また、領収書や契約書も、取引の根拠として必要なもので、これらの資料は7年間保管しておく必要があります。失くしたりしないよう、大切に保管しておきましょう。
税理士との連携を取る
顧問税理士がいる場合は、税務調査があると分かった時点で相談に行きましょう。税務調査当日の流れや、想定される質問、当日準備すべき資料について適切に教えてくれます。
可能であれば、調査当日に税理士に同席を依頼しましょう。調査官からの質問に対して、一緒に回答してくれます。顧問税理士であれば、一連の業務と売上、それにかかった経費、を把握しているはずなので、慌てたりすることなく質問に答えてくれます。
税務調査時の注意点
税務調査当日は、必要書類の提出や調査官からの質問に答えることになりますが、次のような点に気を付けて、落ち着いて丁寧に対処する事を心がけましょう。
- 質問には正確かつ簡潔に答える
- 不明点や記憶が曖昧な場合は正直に伝える
- 不適切な資料提出や虚偽の回答は絶対にしない
- 指摘があった箇所については、修正が必要なものなのか慎重に検討する
- 資料の提出を求められた場合は、可能な限り原本ではなくコピーを渡す
特に、調査官から指摘があったからと言って、すべてを鵜吞みにして修正する必要があるとは限りません。というのも、調査官は単に質問しているだけで、事実を確認しているだけという事もあります。まれに、指摘されたという事実に気圧されて、委縮した結果すべてに同意してしまう人がいるのですが、指摘のあった箇所は本当にそうなのか、慎重に確認することをおすすめします。
まとめ
税務調査と聞くと、誰しも多少は身構えてしまうものです。ですが、税務調査は決して恐れるものではなく、適切に対応すれば円滑に進めることができます。
重要なのは、日頃から正確な帳簿管理を心がけ、税法を順守した申告を行うこと。そして領収書などの資料は、定められた期間分、確実に保存しておくこと。当日の受け答えは、誠実かつ冷静に行うことです。
税務調査の当日は、自分で対応することもできますが、やはり専門家である税理士に立ち会ってもらう方が良いと思います。普段から相談している顧問税理士がいるのであれば、調査当日に同席可能かどうか、一度聞いてみましょう。当日、税理士が同席していれば、心理的負担が軽減されるのはもちろん、質疑応答にも適切に回答できるようになります。
調査官が言うことが絶対というわけではなく、調査結果に納得がいかなければ、不服の申し立てをすることもできます。
どうしても、ジャッジされるという印象が強い税務調査ですが、専門家の手を借りることで、誤った判断をされる可能性は劇的に軽減します。税務調査が不安なのであれば、来ることが分かった時点で、即座に専門家に相談する事をおすすめします。
執筆者紹介
- 東京都町田市生まれ、神奈川県相模原市在住。
慶應義塾大学商学部卒
大学卒業後、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)勤務を経て
平成27年独立開業。
相模原地域を中心に、多くの企業の会社設立を支援。多数の講演実績。
出版書籍に
「会社と家族を守る事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46」
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