最近は、街中でも外国人従業員を目にすることが一般的になってきました。では実際に、自分の会社で外国籍の人材を雇いたいとなった場合、どんな手続きが必要なのでしょうか?
外国人労働者の採用には、日本人とは異なる手続きや確認事項があり、適切に対応しないと「不法就労助長罪」などの法的リスクを負う可能性があります。そこで今回は、外国人労働者を採用する際に必要な手続き、注意点、そして創業期や中小企業でも実践できる受け入れ体制について解説します。
外国人労働者採用の現状と基礎知識
増加する外国人労働者数
厚生労働省の「外国人雇用状況」によると、2024年10月末時点で日本国内の外国人労働者数は約230万人と過去最高を更新しています。2011年には約70万人だったので、この15年間で3倍以上の外国人労働者が生まれていることになります。実際、神奈川県や東京都でも、製造業、サービス業、建設業などを中心に外国人労働者の雇用が拡大しており、外国人雇用は一般的なものとなりつつあります。
外国人労働者を雇用できる在留資格とは
日本で働くことができる外国人は、適切な在留資格を持っている必要があります。
主な在留資格は以下の通りです。
就労に制限がない在留資格
- 永住者
- 日本人の配偶者等
- 永住者の配偶者等
- 定住者
これらの在留資格を持つ方は、日本人と同様に仕事に就くことができます。ただし、原則として職種制限はありませんが、風営法などの他法令による制限がかかる業務は除かれます。
就労内容に制限がある在留資格
- 技術・人文知識・国際業務(いわゆる「技人国」):事務職、通訳、システムエンジニアなど
- 技能:外国料理のコック、スポーツ指導者など
- 特定技能:介護、建設、製造業など14分野(2024年時点)
- 技能実習:農業、製造業など
原則として就労が認められない在留資格
- 留学
- 家族滞在
ただし、「資格外活動許可」を取得すれば、週28時間以内(留学生は学則による長期休暇中は1日8時間・週40時間以内)のアルバイトが可能です。
採用前に必ず確認すべき3つのこと
①在留カードの確認
外国人を採用する際、最も重要なのが在留カードの確認です。在留カードは、中長期在留者に交付されるICチップ付きのカードで、以下の情報が記載されています。
確認すべき項目
- 個人情報:氏名、生年月日、国籍
- 在留資格:どのような活動ができるか
- 在留期間:いつまで日本に滞在できるか
- 就労制限の有無:「就労不可」の記載がないか
偽造カードの見分け方
- ICチップが埋め込まれているか
- ホログラム処理がされているか
- 出入国在留管理庁のアプリ「在留カード等読取アプリケーション」で真贋確認が可能
必要な確認を怠り、偽造カードを見抜けずに雇用してしまうと、事業主も不法就労助長罪(3年以下の懲役または300万円以下の罰金)に問われる可能性があります。
②就労可能な業務内容の確認
在留資格によって、従事できる業務が異なります。
よくある間違い
- 「技術・人文知識・国際業務」の在留資格者を、単純作業や現場作業に従事させる
- 「留学」の在留資格者を、資格外活動許可なく、または許可された時間を超えて働かせる
例えば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は、大学等で学んだ知識を活かす専門的な業務が対象です。工場のライン作業や清掃、レジ打ちなどの単純労働には従事できません。
採用前に、「この在留資格で、この業務を行えるか」を必ず確認しましょう。判断に迷う場合は、社労士や地方出入国在留管理局に相談することをお勧めします。
③雇用契約書の作成と労働条件の説明
外国人労働者であっても、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法などの労働関連法規が適用されます。
雇用契約で明示すべき事項
- 業務内容
- 労働時間、休日
- 賃金(最低賃金以上であることが必須)
- 契約期間
- 就業場所
重要なのは、外国人が理解できる言語で労働条件を説明することです。必要に応じて、母国語の雇用契約書や労働条件通知書を用意するか、通訳を介して丁寧に説明しましょう。
厚生労働省では、複数言語の雇用契約書や就業規則のモデル様式を公開しているため、活用できます。
採用後に必要な手続き
ハローワークへの届出(外国人雇用状況の届出)
外国人を雇用した場合、事業主はハローワークに「外国人雇用状況」を届け出る義務があります(雇用対策法第28条)。
届出のタイミング
- 雇用保険の被保険者となる場合:雇用保険の資格取得届と同時
- 雇用保険の被保険者とならない場合:雇入れ・離職の翌月末日まで
届出に必要な情報
- 氏名、在留資格、在留期間、生年月日、性別、国籍・地域
- 資格外活動許可の有無
届出を怠ると、30万円以下の罰金が科される可能性があります。
社会保険・労働保険の加入
外国人労働者も、要件を満たせば社会保険(健康保険・厚生年金保険)と労働保険(雇用保険・労災保険)に加入する必要があります。
社会保険の適用
- 週の所定労働時間が20時間以上など、一定の要件を満たす場合に加入義務
- 外国人であっても日本人と同じ基準が適用される
留意点:年金制度
外国人労働者から「母国に帰るのに年金を払う意味がない」と質問されることがあります。しかし、以下の制度があることを説明しましょう。
- 脱退一時金制度:帰国後、一定の要件を満たせば、納付した保険料の一部が返還される
- 社会保障協定:日本と協定を結んでいる国との間で、年金加入期間を通算できる
税理士の視点からは、社会保険料は法定福利費として損金算入できるため、適切に処理することが重要です。
税務上の手続き
外国人労働者の給与についても、源泉徴収が必要です。
非居住者と居住者の区別
- 居住者:日本に住所があるか、1年以上居所がある者→通常の源泉徴収
- 非居住者:上記以外→20.42%の源泉徴収(給与所得の場合)
多くの外国人労働者は「居住者」に該当するため、日本人と同様の源泉徴収を行います。
年末調整と確定申告居住者である外国人労働者も、年末調整の対象となります。扶養控除等申告書の提出を受け、適切に処理しましょう。
採用時の実務チェックリスト
外国人労働者を採用する際、以下のチェックリストを活用してください。
採用前
□在留カードの確認(真贋、在留資格、在留期間)
□就労可能な業務内容の確認□資格外活動許可の確認(該当者のみ)
□労働条件の説明(理解できる言語で)
□雇用契約書の作成・締結
採用後(雇入れ時)
□ハローワークへの外国人雇用状況の届出
□社会保険・労働保険の加入手続き
□源泉徴収の開始
□扶養控除等申告書の提出
採用後(定期的な確認)
□在留期間の満了日管理
□業務内容が在留資格に適合しているか確認
□労働時間の管理(資格外活動許可者は特に注意)
□定期面談の実施
まとめ:適切な手続きで安心して外国人労働者を受け入れる
外国人労働者の採用は、人手不足解消や事業拡大の有効な手段ですが、適切な手続きと受け入れ体制の整備が不可欠です。
最低限押さえるべきポイント
- 在留カードで在留資格と在留期間を必ず確認
- 就労可能な業務内容かを判断
- ハローワークへの届出を忘れずに
- 社会保険・労働保険の加入手続き
- コミュニケーション環境の整備
「初めて外国人を雇うので不安」「手続きが複雑で何から始めればいいか分からない」という方は、まずはお気軽にご相談ください。適切な手続きで、安心して外国人労働者を受け入れる体制づくりをお手伝いします。
執筆者紹介

- 税理士眞﨑正剛事務所 社会保険労務士法人眞﨑正剛事務所
- 東京都町田市生まれ、神奈川県相模原市在住。
慶應義塾大学商学部卒
大学卒業後、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)勤務を経て
平成27年独立開業。
相模原地域を中心に、多くの企業の会社設立を支援。多数の講演実績。
出版書籍に
「会社と家族を守る事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46」
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