タイムカードやExcelによる勤怠管理から、クラウド勤怠システムへと移行する企業が増えています。創業前や起業直後であればなおさら、創業直後からクラウドでの管理を考えている人が多いのではないでしょうか。
しかし、「とりあえず導入したものの、うまく使いこなせていない」「自社のルールに合わず、結局Excelと二重管理になってしまった」というご相談は、社労士事務所にも頻繁に寄せられています。どんなシステムでもそうですが、導入そして適切な運用をするには、事前に知識をつけておく必要があります。
そこで今回は、クラウド勤怠システムを導入する際の主な注意点と、失敗しないための実践的なチェックポイントをまとめました。
クラウド勤怠システムとは?
クラウド勤怠システムとは、インターネット上で従業員の出退勤・労働時間・休暇取得状況などを一元管理できるシステムです。スマートフォンやパソコンから打刻でき、集計も自動で行われるため、管理担当者の業務負担を大幅に削減できます。
さまざまなサービスが存在しますが、特に中小企業向けとして代表的なのは「freee勤怠管理」「ジョブカン勤怠管理」「カオナビ勤怠」などで、聞いたことのある人もいるのではないでしょうか。
2019年の働き方改革関連法施行以降、企業には従業員の労働時間を「客観的な方法」で正確に把握することが義務付けられています。タイムカードやExcelでの管理だと、漏れが生じてしまう恐れがありますが、オンタイムで管理できるクラウド勤怠管理であれば、そのリスクは激減するため、法令遵守の観点からも非常に効果的と言えます。
導入前に知っておきたい注意点
自社の勤務体系に対応しているか?
クラウド勤怠システムは、サービスごとに得意不得意があります。
例えば、「固定時間制には強いが、フレックスタイム制・変形労働時間制・シフト制には対応が限定的」といったものもあり、「導入してから自社の勤務ルールが設定できないことに気づいた」というケースも、実は珍しくありません。
また、正社員・パート・アルバイトなど、「雇用形態ごとに異なる集計ルールが設定できるかどうか」も重要なポイントです。
これらの制度に合わせた設定ができていないと、残業時間の算出が誤り、割増賃金の未払いといった誤りが発生するリスクがあります。自社の就業規則を手元に用意した上で、各システムの対応状況を確認しましょう。
社内ローカルルールの「棚卸し」をする
「振替休日は時間単位で取得できる」「特定の部署だけ残業の申請方法が違う」など、勤怠管理の現場には、「長年の慣行として根付いているローカルルール」が数多く存在します。
しかし、クラウドシステムはあくまで法令や一般的な就業規定を前提に設計されています。ローカルルールを無理にシステムに合わせようとすると、カスタム設定が複雑になり、長期運用でトラブルが生じることがあるので、導入を機に、社内ルールを整理・標準化しておくことがおすすめです。
それが難しい場合は、導入前に、クラウド勤怠管理システムの担当者に直接相談する、もしくは社労士事務所にアドバイスを求めると、導入後の混乱が少なくてすみます。
既存システムとの連携を事前に確認する
勤怠データは、給与計算・社会保険の手続き・経費精算など、さまざまな業務と密接に連動しています。
現在利用している給与計算ソフトや人事管理システムと、クラウド勤怠システムが連携できるかどうかを必ず確認しておきましょう。
連携がスムーズでないと、データの手入力や二重管理が発生し、せっかくの効率化メリットが半減してしまいます。
36協定の上限管理ができているかを確認
時間外労働を行う企業は、36協定を締結・届出する必要があります。そして、原則として「月45時間、年360時間」が上限となっています。
クラウド勤怠システムを導入するなら、36協定の上限管理アラート機能があるかを必ず確認しましょう。単に残業時間が集計されるだけでは不十分で、
・特別条項付きかどうか
・年間累計時間が把握できるか
・管理者に警告が出るか
ここが設定できていないと、知らない間に上限超過となり、労基署の是正指導リスクが高まります。
アラート機能は、すなわち「残業が多い社員を早期に発見できる仕組み」ということ。労務リスク管理のためにも、ぜひアラート機能は重視しましょう。
打刻の客観性は担保されているか
厚生労働省は、労働時間の把握について「客観的な方法」を求めています。クラウド勤怠システムでも、
・自己申告だけで修正できる
・打刻後の修正履歴が残らない
・上司が自由に修正できる
このような状態では、客観性が担保されているとは言えません。特にテレワークや直行直帰がある場合、
・GPS機能
・IP制限
・承認フロー
・修正ログ保存
といった機能があるかを確認する必要があります。
サポート体制の確認
最後に確認しておいた方がいいのは、サポート体制です。クラウド勤怠管理の導入には、「ひとつも問題がない」といった事は恐らくありません。なにかしらシステム変更しなくてはならない箇所があったり、残業代の計算などで調整することも出てきます。
いざ問い合わせたいとなった時、窓口がない・つながらない、といった状態だと問題がありますので、その点についてもぜひ確認しておきましょう。
まとめ
クラウド勤怠システムは、正しく選んで適切に設定すれば、労務管理の精度向上と業務効率化を同時に実現できる強力なツールです。一方で、自社の実態に合わないシステムを安易に導入してしまうと、逆に混乱を大きくしてしまいます。
導入前のヒアリングや就業規則の見直し、システム設定の確認など、専門的な判断が必要な場面も多くあります。「どのシステムが自社に合うかわからない」「設定が複雑で困っている」といった場合は、お気軽に社労士事務所にご相談ください。
執筆者紹介

- 税理士眞﨑正剛事務所 社会保険労務士法人眞﨑正剛事務所
- 東京都町田市生まれ、神奈川県相模原市在住。
慶應義塾大学商学部卒
大学卒業後、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)勤務を経て
平成27年独立開業。
相模原地域を中心に、多くの企業の会社設立を支援。多数の講演実績。
出版書籍に
「会社と家族を守る事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46」
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