合同会社の社員の退社は株式会社におけるものとは意味合いが異なります。
出資者が一人抜けることになるので、退職届を出すことに加えて様々な手続きが必要です。
退社に伴う持分の払戻しによって資本金が減少するため、その手続きが必要になりますし、業務執行社員であれば退社登記も必要です。
合同会社とは
合同会社は会社形態の1つであり、アメリカ合衆国の会社形態をモデルとしています。
株式会社では、経営者と出資は同一でなくて良いですが、合同会社は出資者=経営者となり、社員全員が経営の決定権を有します。
その社員から代表権を付与された人が代表社員です。全社員が代表権を持っていると、混乱を招く可能性があるため、特定の方が代表となり、権利を行使できる「代表社員」を定款で定めることも可能です。
また、一部の社員だけに業務執行権限を与えることも可能です。業務執行権限を持つ社員は業務執行社員とされます。
合同会社社員の退社
合同会社では社員は出資者なので、社員の退社は「会社の財産が流出すること」です。よって、債権者保護の観点から社員退社に関しては規制が設けられています。
社員退社のケースとしては、自ら退く任意退社と一定事由の発生により会社主導で退社させる法定退社があります。
(1)任意退社
合同会社の存続期間を定款で定めない場合、もしくは社員の終身の間、会社が存続する旨を定款で定めている場合では、6ヵ月前に会社側に退社すること伝えておけば、退社可能となっています。(退社の予告)
また、やむを得ない事由があれば、社員はいつでも退社できます。「やむを得ない」とは、定款規定をした時や入社時等の前提としていた状況が変わり、当初の合意どおりに社員として居続けることが不可能になったケースが該当します。
なお、定款で退社の事前予告時期を短くする、会社に入社してから一定期間は任意退社不可とすることもできます。
(2)法定退社
法定退社とは、会社法の607条に定められた以下の事由に該当することで退社が決定となることです。
- 定款で定めた事由の発生
- 総社員の同意
- 死亡
- 当該合同会社が消滅会社となる合併
- 破産手続開始の決定
- 解散
- 後見開始の審判を受けたこと
- 除名
一部項目に該当しても、定款で退社しないように定めることもできます。
社員の退社に伴う手続き
合同会社の退社手続きとして、持分の払戻しがあります。退社した社員は、その出資の種類を問わず、死亡等の特殊なケースを除き、持分の払戻しを受けられます。
持分は金銭で払い戻すことができます。車や不動産等による現物出資をしていた場合でも、現金での払い戻しが可能です。そして、払戻し額は出資額ではなく、退社時の会社の財産状況に応じて算出します。
つまり、会社に利益が出ていれば出資割合に応じて資本金額の一部を受け取れます。(利益が出ておらず債務超過であれば、払戻しが受けられません。)
持分の払い戻しの範囲は、債権者保護のために資本剰余額の範囲になりますが、それを超える払い戻しになる場合、もしくは資本金額が減少する場合、債権者は合同会社に対し異議を唱えることができます。(債権者保護の手続き)
退社する社員の持分の全額を、既存社員に譲渡する場合、資本金額の減少はないので、債権者保護手続きは不要です。(持分譲渡には社員全員の同意が必須)
社員が死亡した場合
合同会社の社員が死亡した場合、当該死亡社員の持分はどうなるのか。
株式会社であれば、死亡した方の株式はその家族=法定相続人が取得します。対して、合同会社では、社員死亡は前述の通り、法定退社事由に該当するので自動的に相続人等に承継されません。
ただし、会社法では定款に定めることにより当該社員持分が相続人等へ承継できるとされています。この場合、法定相続人等の一般承継人が、死亡社員の保有持分を引き継ぎ、新しく合同会社の社員となります。
社員が1名の一人会社の場合
合同会社は社員1名からでも設立が可能です。逆に言えば、1人しかいない社員が退社すると、その会社は解散となります。会社の解散は、事業を停止して法人格を消滅させることです。
1人会社で持分を金銭等で回収するには、第三者へ持分を譲渡するか、合同会社を解散・清算の手続きを経ることになります。
登記上の注意点
業務執行社員と代表社員の変更が生じたときは、その変更から2週間以内に登記しなければなりません。
退社する社員が代表や業務執行社員でなければ、氏名が登記されていませんので登記手続きは不要です。
ただし、退社により資本金額が減少する場合は、資本金額の変更(減資)の登記が必要です。
まとめ
合同会社の社員退社について、詳しく解説しました。
退社には任意のものと会社主導で退社させる法定退社があります。いずれにせよ、株式会社と違って、手続き内容はまったく異なります。
また、退社する社員が業務執行社員や代表社員である場合や、資本金が減少する場合は登記変更が生じるので注意しましょう。
「 会社設立のやり方がわからない」「なかなか時間が取れない」こんなお悩みを抱えている場合は是非、相模原・町田・座間・海老名会社設立支援センターまでご相談ください。手続きの代行はもちろん、設立後の節税対策や資金調達など、支援実績が豊富な税理士法人がワンストップで問題を解決いたします。
執筆者紹介
- 東京都町田市生まれ、神奈川県相模原市在住。
慶應義塾大学商学部卒
大学卒業後、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)勤務を経て
平成27年独立開業。
相模原地域を中心に、多くの企業の会社設立を支援。多数の講演実績。
出版書籍に
「会社と家族を守る事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46」
最新の投稿
- 会社設立コラム2025年1月25日2025年の確定申告、変更点と注意するポイント
- 会社設立コラム2025年1月21日2025年に新設!「中小企業新事業進出補助金」について解説
- 会社設立コラム2024年12月25日「賃上げ促進税制」とは? 制度内容と中小企業への影響について解説
- 会社設立コラム2024年12月21日中小企業の「住民税の支払納期特例」とは?