2018年、「はぐくみ企業年金(正式名称::福祉はぐくみ企業年金基金)」の運用が開始されました。はぐくみ企業年金は、特に福祉業界で働く人々のために設計された確定給付企業年金制度で、導入する事業者、加入する従業員の双方にメリットがあります。
そこで今回は、はぐくみ企業年金の特徴と、メリット・デメリット、導入・加入要件について解説していきます。
はぐくみ企業年金とは?
はぐくみ企業年金は、2018年に厚生労働大臣の認可を受けて設立された、確定給付型の企業年金制度です。この制度は、主に医療、保育、介護など福祉分野で働く従業員の資産形成と福利厚生を支援するために導入されました。
確定給付型の年金制度なので、加入者が将来受け取る年金給付額は確定しており、運用リスクは会社側が負担します。この制度は、従業員だけでなく、経営者や役員も加入可能で、幅広い従業員に対する退職金制度の一環として活用されることも見込まれています。
非常に利用しやすく、安定性の高い制度として人気が高いので、加入事業者・加入者数を急速に伸ばしています。2018年の設立からたったの5年で、加入事業者は1,566以上、加入者は47,344人となりました。
「はぐくみ企業年金」運用の仕組みと特徴
はぐくみ企業年金の掛金は、月額1,000円から給与の20%(上限40万円)まで設定可能です。企業は従業員のために資金を拠出し、専門の資産運用チームがその資金を運用します。この運用によって得られた収益は、従業員の退職後に給付金として支払われます。
はぐくみ企業年金の大きな特徴は、加入者に難しい投資知識が不要で、元本が保証されている点です。運用リスクは企業が負担するため、従業員は安心して将来の年金給付を受けることができます。さらに、退職時だけでなく、休職時や育児・介護休業時にも給付が受けられるという柔軟性も持っています。
事業者にとってのメリット
優れた福利厚生制度の構築
従業員に安定した年金給付を提供し、効果的な福利厚生制度を整えることができるというのが、一つ目の大きなメリットです。特に、医療・福祉業界では人材不足が深刻な問題となっているため、福利厚生を手厚くすることで、優秀な人材の採用・定着を狙うことができるでしょう。
退職金制度の簡素化、運用コストの削減
企業が元手なしで退職金制度を構築できる点も、はぐくみ企業年金の大きなメリットです。退職金制度は従業員にとって非常に重要なものですが、その管理・運用は企業にとって負担が大きいのも事実です。
はぐくみ企業年金を利用すれば、運用やリスク管理は専門機関に任せることができ、大きな労力をかけずに退職金制度を提供することができます。
役員も加入することができる
中小企業退職金共済などの既存の制度のいくつかでは、会社の役員である人は加入することができませんでした。一方、はぐくみ企業年金であれば役員も加入することができます。
従業員にとってのメリット
元本が保証されている
加入者が払った掛金は元本が保証されており、運用リスクはありません。これにより、安心して長期的な資産形成が可能になります。
退職や休職中の給付金がある
はぐくみ企業年金は通常の企業年金とは異なり、退職時だけでなく、休職中や育児・介護休業中にも給付金を受けられる柔軟な設計になっています。
運用管理がカンタン
企業型確定拠出年金を利用している事業者も多いのですが、この場合、掛け金の運用は、加入者本人が行う必要があります。つまり、自分でどの株に投資するかを決め、運用していくことが必要になるのです。
これは、資産運用の知識を持たない従業員にとって非常に大きな負担となりますが、はぐくみ年金の場合は、資産運用をはぐくみ企業年金基金が行ってくれるため、負担が少なく資産運用が可能になります。
給付金の受取時に税金の優遇措置がある
はぐくみ企業年金を退職金として受け取る場合、退職所得としての受け取りとなり、「退職所得控除」が適用されます。また、休職・休業時に受け取る場合も、一時所得としての扱いになり、50万円まで非課税で受け取ることが可能です。
一方、加入期間が20年以上になると年金として受け取ることができ、その場合、雑所得として「公的年金等控除」が適用されます。いずれにせよ、税制優遇が適用されるのが大きなメリットだと言えるでしょう。
まとめ
はぐくみ企業年金は、福祉業界における人材定着や福利厚生の強化に役立つ、メリットの多い制度です。多くの確定拠出年金は、60歳にならないと給付金を受けることができませんが、はぐくみ企業年金の場合は、産休育休・介護休暇などの休業時にも受け取ることができます。
また、役員も加入できるので、経営者にとっても非常にありがたい存在で、退職金を貯蓄するために利用する人が多くなっています。
企業の将来を見据え、持続可能な福利厚生制度を導入するために、はぐくみ企業年金の利用をぜひ検討してみてください。
特に専門性が高い、節税対策や資金調達については、適宜アドバイスを受けながら進めていくことで、安定的な経営につながると思います。
執筆者紹介
- 東京都町田市生まれ、神奈川県相模原市在住。
慶應義塾大学商学部卒
大学卒業後、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)勤務を経て
平成27年独立開業。
相模原地域を中心に、多くの企業の会社設立を支援。多数の講演実績。
出版書籍に
「会社と家族を守る事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46」
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