神奈川県内に本社を構えて創業する場合、県や各自治体が用意している「融資制度」を利用することができます。創業期には何かと資金が必要になるもの。神奈川県や自治体の融資制度には、要件を満たせば、民間の金融機関で借入をするよりも有利な条件で融資を受けられるものが多くあります。
そこで今回は、創業時に活用できる神奈川県の融資制度と、2025年時点での要件について解説します。
神奈川県の「創業支援融資」
神奈川県では、創業予定または創業後5年未満の方に向けて「創業支援融資」という制度を提供しています。起業に必要な初期資金を神奈川県がサポートすることで、地域経済の活性化と雇用創出を狙うことが目的です。
個人事業主であれば1ヶ月以内、法人であれば2ヶ月以内に創業を予定している人を対象に、最大3500万円の融資が受けられます。
利用対象
ア 事業を行っていない個人で、1か月以内に個人事業を創業予定の方
イ 事業を行っていない個人で、2か月以内に法人を設立し創業予定の方
ウ 分社化により別法人を設立して法人事業を創業予定の中小企業者
エ 事業を行っていない個人が個人事業を創業してから5年未満の方
オ 事業を行っていない個人が法人を設立してから5年未満の中小企業者
カ 分社化により別法人として設立された法人で、設立してから5年未満の中小企業者
キ 事業を行っていない個人が開始した事業を法人化し、個人事業創業時から5年未満の中小企業者
ク 経営状況の悪化により事業を廃止又は法人を解散してから5年未満でア・イ・エ・オ・キに該当する方
※引用:神奈川県「創業支援融資」
なお、創業後5年未満の個人事業主・法人や、分社化により別法人を設立した場合も利用することができます。そのため、資金繰りなどで追加融資を受けたいという方も、創業から5年未満であれば、神奈川県の創業融資の活用を視野に入れても良いでしょう。
融資利率が優遇される「創業特例」とは
上記の対象者で、かつ「指定する団体からの経営指導を受けており、さらに、融資実行後も概ね2回以上の経営指導を受ける方」もしくは「国が認定した特定創業支援等事業を利用した方」については、融資時の金利が優遇される特例制度があります。
優遇利率は、通常の利率よりも0.2%引き下げられます。
融資の条件
使途:運転資金、設備資金
融資限度額:3,500万円
融資利率(固定金利):年2.0%以内 ※創業特例の場合は年1.8%以内
融資期間:1年超10年以内
返済方法:分割返済(1年以内の据置き可※1)
担保:不要
保証人:原則として法人代表者以外の連帯保証人は不要(経営者保証を不要とすることも可能)
信用保証料率※2 0.40%(経営者保証不要の場合0.60%)
※創業特例の場合は0.00%(経営者保証不要の場合0.20%)
※1 経営者保証を不要とする要件を満たし、申込金融機関においてプロパー融資残高があるか創業支援融資と同時にプロパー融資を実行する場合、据置期間は3年以内
※2 県の補助及び神奈川県信用保証協会の割引後の料率
創業融資は「事業を安定的に継続するためのお金」という考えであるため、融資されたお金は、事業の運転資金もしくは設備投資に使途が限られています。
運転資金とは、事業を継続して行くために必要となるお金のことです。仕入れ費用や人件費、家賃光熱費などがそれに当たります。設備資金は、事業開始時や事業拡大のために、必要な設備に投資する資金を指しています。
なお、設備資金を使う際には、発注予定の業者から見積書を受け取りましょう。なんの設備にどれだけ投資をする予定なのか、その金額も審査に影響するからです。
対象の市町村
横浜市、川崎市、相模原市、横須賀市、平塚市、鎌倉市、藤沢市、小田原市、茅ヶ崎市、逗子市、三浦市、秦野市、厚木市、大和市、伊勢原市、海老名市、座間市、南足柄市、綾瀬市、葉山町、二宮町、寒川町、松田町、山北町、箱根町、真鶴町、愛川町・清川村
※大磯町や中井町、湯河原町を含めた5つの町は、融資制度の対象外となっています。
経営者保証要件の除外
これまで、創業時に融資を受けるには、経営者個人が会社の連帯保証人となる「経営者保証」が当然のように求められてきました。
ですが、万が一、会社が倒産した場合、経営者個人の資産まで失われてしまうため、再チャレンジが極めて困難になるなど、個人の人生を脅かしてしまうことから、最近では政府主導で「経営者保証を除外した融資制度」の創設を進めています。
神奈川県の「創業支援融資」も、その流れをくんで、次の要件を満たせば経営者保証を外すことができるようになっています。
(1) 融資申込受付時点において税務申告1期未満の場合は、創業資金総額の10分の1以上の自己資金を有することが必要
(2) 所定の創業計画書が必要
(3) 創業3年目と5年目に専門家による経営者保証ガイドラインの充足状況の確認と助言を受けることが必要
これは、その他の融資制度においてもそうで、個人の資産や人生設計を守るためにも、なるべく経営者保証が不要な形で進められないか、まずは検討することが大切です。
創業支援融資への申し込み方法
「創業支援融資」を受けるには、神奈川県が指定する提携金融機関で申し込みを行います。
みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行のメガバンクの他、りそな銀行、横浜銀行、東京スター銀行などの中堅銀行も対象です。また、信用金庫(横浜信用金庫、かながわ信用金庫など)や各種信用組合、商工組合中央金庫でも申し込みが可能です。詳しい提携先は、こちらで確認してください。
申し込み方法の手順は次の通りです。
- 申し込み:取扱金融機関へ融資を申し込みます。
- 保証依頼:取扱金融機関を通して信用保証協会に保証を依頼します。
- 信用保証書発行:信用保証協会が審査を行い、保証決定する場合は、「信用保証書」を発行します。
- 融資:審査に通過後、申し込みをした金融機関から融資がなされます。
まとめ
神奈川県の「創業支援融資」は、フルに活用することで最大3,500万円が経営者保証ナシ、1.8%の金利で借り入れることができるメリットの大きい制度です。
融資申し込みには、創業計画書(すでに事業を開始している場合は財務書類と確定申告書)、設備資金に使う際の見積書などの提出が必要です。様式が指定されている書類についてはこちらのページからダウンロードできます。
神奈川県でこれから創業する方、創業後から5年未満で新たな融資を受けたいという方は、ぜひ一度検討してみましょう。
執筆者紹介

- 税理士眞﨑正剛事務所 社会保険労務士法人眞﨑正剛事務所
- 東京都町田市生まれ、神奈川県相模原市在住。
慶應義塾大学商学部卒
大学卒業後、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)勤務を経て
平成27年独立開業。
相模原地域を中心に、多くの企業の会社設立を支援。多数の講演実績。
出版書籍に
「会社と家族を守る事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46」
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