「税理士は顧問契約を結んだら、ずっと同じ先生にお願いするもの」と考えてはいないでしょうか?確かに、同じ税理士と長きにわたって関係を築くことは非常に大切です。とはいえ、初めて契約した税理士が、会社にとって最適な人だとは限りません。
例えば、会社が大きくなれば税務内容も変わってくるので、現在の税理士では対応しきれなくなるというケースも良くあります。そこで今回は、税理士を変更するのに適したタイミングについて紹介したいと思います。
会社の規模が大きくなってきた時
創業当初は、小規模な税理士事務所にお世話になることも多いでしょう。税理士を選んだ理由としてよくあるのが、「地元で有名な税理士だったから」「知人の紹介で」「先代からずっと付き合っているから」という理由です。
事業が小さい間は、もちろんそれでも問題ありません。ですが、事業が拡大し、売上が上がり、従業員数が増加してくると、より専門性の高い実務知識や財務に関するアドバイスが必要になってきます。
事業規模が大きくなれば、次のような課題が出てくることが多いです。
- 利益が増えたので、より高度な節税対策や財務戦略が必要になった
- 従業員数が増えたので、人事労務管理や社会保険手続きが複雑になってきた
- 新規事業への展開を検討しており、融資を受けようと考えている
- M&Aを検討している
- 海外進出を考えている
このようなケースでは、現在契約している税理士では対応しきれないことがあります。というのも税理士は、その税理士事務所ごと、もしくは税理士個人によって得意な領域が異なるケースが多いからです。
小規模事業の税務を得意としている税理士だと、M&Aや海外進出に関する税務知識が十分ではない場合があります。また、新規事業のために融資を受けようと考えているのに、借金は良くないということで、まったく提案をしてくれない税理士も存在しています。
そうなると、現在の税理士に対して物足りなさを感じるのは当然です。事業規模が大きくなって、事業フェーズが変わったと思ったら、一度税理士を見直してみることをおすすめします。
クラウド会計に対応してもらえないとき
近年、クラウド会計ソフトの普及が進み、もはやクラウド会計は一般的になってきました。電子帳簿保存法の施行により、その流れは一層進んでいくことは誰の目にも明らかで、これによって業務効率が格段に上がりますし、コスト削減にもつながります。
ところが、クラウド会計ソフトに対応していない、あるいは導入に消極的な税理士は存在しています。
クラウド会計ソフトを導入したいと考えているのに、税理士が対応してくれないのであれば、まさに税理士を変更すべきタイミングです。最近では、クラウド会計ソフトに精通した税理士もいて、導入支援から運用サポート、使い方の質問を受け付けている税理士もいますので、ぜひ探してみると良いでしょう。
税務と労務を同時に相談したいとき
税務と労務は密接に関係しています。そのため、両方の知識を持った専門家に相談できると、効率的な経営判断ができる可能性がぐっと高まります。
ただし、税務の専門家である「税理士」と、労務の専門家である「社会保険労務士」は別の資格なので、どちらか片方しか持っていないということも少なくありません。現在依頼している税理士はどうでしょうか?
従業員が増え労務が複雑化してきたら、社会保険労務士に依頼する企業がほとんどですが、税理士とまったく別々に依頼している会社も多いです。ですが先に話した通り、合理的な経営判断をするために、税務と労務を同時に相談したいのであれば、税理士と社会保険労務士の両方の資格を持つ専門家、あるいは税理士と社会保険労務士が連携している事務所に変更することをおすすめします。
事業承継や相続を控えている
事業承継や相続は、企業にとって非常に重要な問題です。「2025年問題」といって、2025年には国内企業の経営者が70歳以上となる中小企業が約245万社、そのうちの約半数の企業が後継者が決まっていないという現状にあります。
無事に後継者が決まっている、もしくはご自身が後継者になる予定があるのであれば、事業承継や相続に関する専門知識を持った税理士に相談することを強くお勧めします。大まかに言えば、事業承継は会社の引き継ぎ、相続は個人資産の引き継ぎとなりますが、そのどちらについても精通している税理士を見つける必要があります。
相続税は非常に税率が高いのが特徴です。きちんと対策をしないと、膨大な額の納税を求められてしまいます。税理士からの提案に納得できない、積極的な節税の提案がないという人は、税理士を見直すタイミングです。
まとめ
もし、あなたが現在の税理士に何らかの不満や不安を感じているのであれば、税理士変更を検討してみる価値は十分にあります。
税理士というのは、事業継続におけるとても大切なパートナーです。特に変更する理由がないので続けているという企業も多いのですが、事業のフェーズが変わった・事業承継の予定がある・税務と労務の連動性をより高めたい、などの場合は、専門知識を持った税理士を探してみましょう。
執筆者紹介
- 東京都町田市生まれ、神奈川県相模原市在住。
慶應義塾大学商学部卒
大学卒業後、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)勤務を経て
平成27年独立開業。
相模原地域を中心に、多くの企業の会社設立を支援。多数の講演実績。
出版書籍に
「会社と家族を守る事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46」
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