会社設立コラム

法人化した際の福利厚生費について【 会社設立後 の税務 】

福利厚生費

福利厚生とは、従業員のために事業主が整備する制度です。給与以外の面で従業員の生活を支える他、仕事のモチベーションを上げるためのものです。

法人化して従業員を新しく雇う場合、福利厚生を充実させることで優秀な人材を確保できる可能性も広がります

福利厚生にかかる費用は一定の要件を満たすと経費計上が可能なため、税負担軽減にもなります。

福利厚生とは

福利厚生とは、会社側が従業員およびその家族に対して提供するサービスや保証です。
福利厚生には大きく分けて「法定福利」と「法定外福利」があります。

法定福利とは、健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料・労働保険料等、法律上、会社側に負担の義務がある社保険料のことです。(法人および5人以上の従業員を抱える個人事業主は、原則として社会保険制度に加入し、その社会保険料の負担が義務となっています。)

一方、法定外福利は、従業員のために任意で設定するものです。家族手当や住宅補助・通勤手当・健康診断費用等が該当します。

福利厚生費として認められるには

福利厚生のための支出をしたとしても、全てを福利厚生費として会計処理できるわけではありません。
税務会計上、福利厚生費として認められるためには、下記条件を満たす必要があります。

  • 全従業員が対象となっている
  • 支出金額が常識の範囲内

福利厚生費は全ての従業員が平等に利用可能なものとされています。特定従業員のみ、役員しか使えないのであれば、福利厚生費と認められません。

また、あまりにも高額な社員旅行費用も福利厚生費にならない可能性が高いです。

注意したいポイント

(1)一人社長の会社では福利厚生費が認められにくい

社長は従業員ではありませんので、そもそも福利厚生の概念がありません

また、役員報酬との区別が難しいという理由から、一人会社の社長の福利厚生は認められにくいのが現状です。(もし、福利厚生費が簡単に認められてしまうと、役員報酬を少なくして福利厚生費にすれば、所得税を自由に調整できることになるからです。)

(2)社長と役員しかいない

役員と社長のみという場合も従業員がいないので、福利厚生という概念がなく、福利厚生費は認められません。(家賃補助や、結婚・出産祝い等の一般的な福利厚生でも、認められません。)

(3)個人事業主でも福利厚生費が認められる

福利厚生費が認められるのは法人だけではありません。

個人事業主でも、従業員を雇用しているのであれば、福利厚生費を計上できます。

ただし、前述した条件を守ることが前提です。基本的には全従業員を含んで利用した支出については大丈夫です。

会計処理上の注意

(1)現金支給のものは給与扱いが原則

家族手当、住宅補助等を現金で直接支給する場合があります。現金支給のものについては、ほとんどが給与扱い(課税対象)になります。

(2)通勤手当の扱い

通勤手当については一定額までは福利厚生費で処理できます。

限度額は、国税庁が定めており、その金額を超える分は、給与扱いとなります。

(3)住宅補助の扱い

福利厚生費計上には、従業員が賃貸料相当額の50%以上負担が条件です。(負担分は従業員の給与から天引きすることも条件です。)

また、法人側が家主となる、もしくは家主と契約をし、支払業務をおこないます。

法人化の際に福利厚生を整備するメリット

(1)人材が集まりやすい

就職や転職において、多くの人が職務内容、労働条件に加えて福利厚生の有無を確認します。福利厚生は人材募集における重要な要素であり、福利厚生が充実していれば、人材も集まりやすいのです。

(2)人材が定着しやすい

福利厚生によってワーク・ライフ・バランスもとりやすくなるので、従業員の満足度は高くなります。

有限な時間を有意義に使えることで、働く意欲が向上し、定着率も高くなるでしょう。

(3)仕事効率が上がる

福利厚生の充実によって、十分な休養をとり、規則正しい生活を送れるようサポートできれば、従業員の健康維持が可能です。

また、働きやすく仕事のしやすい労働環境で働けることで、従業員は、自らの能力を発揮しやすくなり、高い集中力をもって仕事に取り組むことができます。

そうなれば、会社全体の生産性も上がります。

まとめ

福利厚生および福利厚生費について解説いたしました。

福利厚生はうまく活用すれば、人材募集効果、定着率アップ、生産性向上が期待できます。従業員を雇う予定があれば、整理してみては如何でしょうか。

ただし、福利厚生費として計上するためには、扱い方を理解する必要があります。法定福利費との違い、要件などを十分に把握し、有効な使い方ができるようになりましょう。


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執筆者紹介

眞崎 正剛
眞崎 正剛税理士眞﨑正剛事務所 社会保険労務士法人眞﨑正剛事務所
東京都町田市生まれ、神奈川県相模原市在住。

慶應義塾大学商学部卒
大学卒業後、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)勤務を経て
平成27年独立開業。
相模原地域を中心に、多くの企業の会社設立を支援。多数の講演実績。
出版書籍に
「会社と家族を守る事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46」