会社設立コラム

「小規模企業共済」とは? メリットとデメリット、節税効果はどれぐらい?

「小規模企業共済」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 個人事業主や、小規模法人の役員などが加入できる共済で、積立金額に応じて共済金を受け取ることができる、退職金のような制度です。

対象者にとって非常にメリットが大きいのですが、知らないという人も実は多い制度です。

そこで今回は、小規模企業共済とはどんな制度なのか?メリットとデメリット、節税効果について解説していきます。

「小規模企業共済」とは?

「小規模企業共済」とは、小規模企業救済法にもとづいて昭和40年に立ち上げられた制度で、国の機関である独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営している、公的な共済制度です。

個人事業主や小規模法人の経営者・役員にとって退職金のような立ち位置で、積み立てた金額に応じて、退職後や、法人が解散した場合に、一定のまとまった金額を受け取ることができます。

現在、全国で加入しているのは約162万人、共済金受給額の平均は1,116万円で、多くの人が退職金代わりとして利用していることが分かります。(※参照:独立行政法人 中小企業基盤整備機構WEBサイト

積立金は、月額1,000円〜70,000円の間(500円単位)で設定します。つまり、年間最低12,000円〜最高840,000円を積み立てることができます。上限額は800万円で、この額に達すると掛金の請求は停止されます。

加入資格

「小規模」と名前に冠しているように、小規模企業共済は加入資格に「小規模であること」が挙げられます。

加入資格のある方

1.建設業、製造業、運輸業、不動産業、農業、サービス業(宿泊業、娯楽業に限る)などを営む場合は、常時使用する従業員の数が20人以下の個人事業主または会社の役員

2.商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業、娯楽業を除く)を営む場合は、常時使用する従業員の数が5人以下の個人事業主または会社の役員

3.事業に従事する組合員の数が20人以下の企業組合の役員や常時使用する従業員の数が20人以下の協業組合の役員

4.常時使用する従業員の数が20人以下であって、農業の経営を主として行っている農事組合法人の役員

5.常時使用する従業員の数が5人以下の弁護士法人、税理士法人などの士業法人の社員

6.上記1、2に該当する個人事業主が営む事業の経営に携わる共同経営者(個人事業主1人につき2人まで)

小規模企業共済のメリット

結論から言うと、小規模企業共済は「加入するメリットが圧倒的に多い制度」です。では、一つずつ見ていきましょう。

掛金全額が所得控除になる

小規模企業共済に積み立てた掛金(かけきん)は、全額所得控除になります。先ほど、積立金額の説明をしましたが、年間最大84万円を所得からまるまる控除することができるのです。節税効果が非常に大きく、本来の退職金目的もさることながら、この節税効果を狙って加入する人もいるほどです。

退職金を効率的に準備できる

経営者や個人事業主は、一般的な会社員と違い、企業から退職金が支給されるわけではありません。そこで、この小規模企業共済に加入することで、自分自身で退職金を作っていくことになります。

また、受給共済金の平均は1,116万円ですから、積立金の上限800万円よりも、増えた状態で受け取ることができるのも大きなメリットです。

受け取った共済金は税制優遇される

退職、また事業終了後に受け取る共済金は、退職所得控除や公的年金等控除の対象となり、税金の負担が軽減されます。

低金利での貸付制度が使える

小規模企業共済は、退職金として利用できるほか、貸付も行っています。加入者は、共済金を担保に低金利の貸付を受けることができるので、事業資金が一時的に不足した場合など、資金繰りの助けになります。

小規模企業共済のデメリット

こんなにお得な小規模企業共済ですが、デメリットがまったくないわけではありません。

早期解約すると元本割れをする可能性がある

小規模企業共済は、解約すると積み立てた分の金額が、積み立ててきた期間に応じて一定の割合で返還されます。ただし、掛金の納付月数が240カ月(20年)未満の場合、元本割れとなります。

とはいえ、掛金を通じて節税した金額と、戻ってくる金額を計算してみると、節税によって得られた金額が多くなるケースも非常に多いです。一概に「元本割れ=悪い」というものではないので、こちらはきちんと計算しておきましょう。

12カ月未満では掛け捨てになる

一方、積立金がまったく戻ってこないということもあります。加入から12カ月未満で解約した場合、積立金は戻ってきません。そのため、最低でも12カ月は続けるという前提で加入しましょう。

まとめ

小規模事業者にとって非常にお得な制度である「小規模企業共済」について紹介しました。

老後の蓄えをしつつ、確実な節税効果が期待できるということで、入っておいた方がいいと言えるのは間違いありません。

事業規模が小さすぎる、または売上の見通しが立たない、ということで、加入をためらう方もいますが、毎月1,000円から積み立てられるので、まずは少しずつ始めてみてはいかがでしょうか。
特に専門性が高い、節税対策や資金調達については、適宜アドバイスを受けながら進めていくことで、安定的な経営につながると思います。

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執筆者紹介

眞崎 正剛
眞崎 正剛税理士眞﨑正剛事務所 社会保険労務士法人眞﨑正剛事務所
東京都町田市生まれ、神奈川県相模原市在住。

慶應義塾大学商学部卒
大学卒業後、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)勤務を経て
平成27年独立開業。
相模原地域を中心に、多くの企業の会社設立を支援。多数の講演実績。
出版書籍に
「会社と家族を守る事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46」