会社設立コラム

法人決算だけを税理士に依頼したい!メリットとデメリットは?

会社を設立して1年後には、法人決算が待っています。企業が決算を行う際に、税理士にサポートをお願いすることはよくありますが、はじめての決算だと、どのように依頼したらよいのかわからないという人も多いのではないでしょうか。

税理士との契約には、「顧問契約」と「決算申告のみの依頼」の2つの選択肢があります。それぞれにメリットとデメリットがあるので、今回は「決算申告のみを税理士に依頼する場合」について、わかりやすく説明していきます。

税理士に「決算だけを依頼する」メリット

では、まずはメリットから説明しましょう。

税理士費用を抑えられる

決算申告のみを税理士に依頼する場合、顧問契約よりも大幅にコストを抑えることができます。顧問契約では、毎月の会計処理や相談などに対して費用がかかりますが、決算申告のみの依頼だとそのような定期的な支払いはありません。

特に資金に余裕のない小規模事業者やスタートアップ企業にとっては、費用を最小限に抑えることができるため、ひとつの方法だと言えるでしょう。なお、もちろん企業規模に応じて税理士費用は変わりますが、決算申告のみ依頼する場合の費用相場は15万円〜25万円から、顧問契約を依頼する場合は毎月5万円ほどからだと言われています。

時間と手間を節約できる

決算作業は複雑で時間がかかるものです。会計や税務の知識がないと、自分で行うのはとても大変で、本業に支障が出る場合も珍しくありません。決算の手間を大幅に減らせるので、経営者には大きなメリットとなります。

決算書の信頼性が高まる

税理士が作成した決算書には、税理士の署名や捺印がされているので、税務署や銀行からの信頼度が高くなります。税理士が関与していることで、正確で適切に処理された決算書だと認められやすくなるということです。

その結果、税務調査のリスク低減にもつながりますし、融資の際に有利に働くこともあります。

税理士とのやりとりが少なくて済む

決算申告のみを依頼する場合、税理士とのやりとりは年に一度だけで済みます。顧問契約では、定期的に連絡を取る必要がありますが、決算申告のみの場合は決算のタイミングだけでよいので、コミュニケーションの負担が少なくなります。

税理士に「決算申告のみ」を依頼するデメリット

では次に、デメリットを見ていきましょう。

十分な節税対策ができない

税理士が日常的な会計業務に関与していない場合、会社の状況をしっかり把握できないため、効果的な節税対策が難しくなります。顧問契約では、年間を通して節税のアドバイスを受けられますが、決算申告のみだとそのような対応が難しくなります。

不可能ではないのですが決算時にいざ節税をしようとなると、これまでの背景の説明や、数字の整合性をとる必要が出てくるので、お互いに負担になるケースが多いです。

経営に関するアドバイスが受けられない

顧問契約では、税理士が経営や財務について定期的にアドバイスをしてくれますが、決算申告のみの依頼では日常的なサポートがありません。経営に関する助言が必要な場合、自分で考えるか、別途相談をする必要があります。

日々の記帳を自社で行う必要がある

顧問契約では、税理士が日常的な記帳や帳簿の管理をサポートしてくれますが、決算申告のみの依頼ではそれがありません。つまり、毎日の取引の記帳や経費の整理などは、すべて自社で行う必要があります。経理作業に慣れていないと、ミスが発生するリスクが高くなる可能性がありますし、日常業務への負担も増します。

顧問契約を結んで税理士に依頼すると、こうした経理業務が格段に楽になるので、本業に集中することができるようになります。

金融機関からの信頼度が下がる可能性がある

顧問税理士がいる会社は、会計処理が適切に行われているとみなされ、銀行などからの信頼が高まります。しかし、顧問税理士がいない場合、融資を受ける際に信頼度が下がる可能性があります。銀行をはじめ各種金融機関は、税理士が定期的に関与している会社の方が信用できると考えることが多いからです。

融資を受けるとなった場合にも、決算書の提出を求められることがありますが、この時にも税理士の署名がある決算書だと信頼性が高まり、融資審査に通りやすくなります。

税務調査への対応が含まれないことがある

決算申告のみの依頼だと、税務調査が行われた際に税理士が対応するかどうかは契約によって異なってきます。顧問契約であれば、税務調査時にもサポートしてもらえますが、決算申告のみの場合、その対応が含まれていないことが多く、追加費用が発生することもあります。

まとめ

決算申告のみを税理士に依頼することで、費用を抑えつつ決算業務を専門家に任せることができ、経営者は本業に集中できます。しかし、節税や経営相談など、顧問契約に比べてサポートが少ない点もあります。企業の規模や状況に応じて、顧問契約も検討しながら、最適な契約形態を選びましょう。

決算申告のみ、という形の契約が向いているのは、小規模事業者やスタートアップ企業、個人事業主です。規模の小さな事業者は資金が限られていることが多いので、コストダウンによるメリットが大きいためです。また、日常の会計業務を自社で対応できる場合も、決算のみの依頼で問題ないでしょう。

ただし、事業が成長し、規模が大きくなるにつれて、メリットが大きくなるのは顧問契約の方です。顧問税理士がいることで、節税対策や経営アドバイスを定期的に受けられ、事業の安定や成長をサポートしてもらえるからです。また、税務調査や融資申請の際にも、税理士がいることでスムーズに対応できるでしょう。

ちなみに、現在、幣事務所は、「決算申告のみの関与をご希望」の方はお断りさせていただいております。それはデメリットに挙げた理由で、そのようなニーズの方にとっては、そこを得手としている幣事務所が関与することは「最適ではない」と思っているからです。

事業が成長するにつれて、税理士のサポートが重要になってくるため、企業の状況に合わせて契約を見直すことも大切です。
特に専門性が高い、節税対策や資金調達については、適宜アドバイスを受けながら進めていくことで、安定的な経営につながると思います。

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執筆者紹介

眞崎 正剛
眞崎 正剛税理士眞﨑正剛事務所 社会保険労務士法人眞﨑正剛事務所
東京都町田市生まれ、神奈川県相模原市在住。

慶應義塾大学商学部卒
大学卒業後、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)勤務を経て
平成27年独立開業。
相模原地域を中心に、多くの企業の会社設立を支援。多数の講演実績。
出版書籍に
「会社と家族を守る事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46」