本記事では、町田市で創業・起業・会社設立を検討されている方に向けて、会社設立のステップ、設立後に必要な社会保険や労務手続き、さらには町田市独自の創業支援制度について徹底解説します。
町田市で創業するメリットとは?

地理的優位性と商業圏
町田市は、関東平野における東京都の最南端で、都心からみて南西方面に位置しており、横浜市と隣接しています。
市内には、小田急線・JR横浜線・東急田園都市線・京王相模原線の4路線が乗り入れており、東京都心はもちろん、多摩地域・神奈川方面の両方にアクセスしやすいのが交通上の利点と言えるでしょう。
自然環境も非常に豊かで緑あふれる都市である一方、特に町田駅周辺では商業として栄えているため、住環境とビジネス環境の両方がバランスよく保たれているエリアです。
人口と商業バランス
町田市の人口は約43万人で、東京都内では23区、八王子市に次いで3番目に人口が多い市です。東京都心や神奈川県への通勤通学者にとって利便性が高いこともあり、1950年代の統計開始から2025年の現在まで人口は右肩上がりに増え続けています。
2021年の町田市の事業所数は11427事業所、従業員は13200人となっており、比較的小規模な事業所が多いのも特徴です。産業別に見ると最も多いのが「卸売業・小売業」、次に多いのが「医療・福祉」、「宿泊業・サービス業」と続いています。この産業構成から、地域住民や町田に訪れる人をメイン顧客層としているビジネスが多いことが伺えます。
地価の安定性とオフィスコスト
町田市に所在する事業所が比較的小規模なことにも理由があります。
それは、新宿・渋谷をはじめとした23区や、横浜市中心部といった都心部と比べ、賃料などのオフィスコストを抑えることができるので、「創業するならまずは町田市で」と考える人が多いためです。なるべく固定費を抑えながら、小リスクな立地で、創業・起業にチャレンジする人が多いということです。
創業希望者・起業希望者にこうしたニーズがあるということは、町田市側でもよく理解しています。そのため、町田市では政策としてスタートアップ企業を支援する方針がとられており、さまざまな補助金・助成金・金利優遇制度が設けられています。
会社設立の手順、流れと手続き
ここからは、創業・起業・会社設立の際に必要な、一般的な手続きについて解説していきましょう。
会社形態の選択
現在、日本で設立できる会社の形態は「株式会社」「合同会社」「合資会社」「合名会社」の4種類です。もっとも数が多いのは株式会社になりますが、設立時の費用を抑えられるとして、最近は合同会社を選ぶ人も増えています。
資金調達のハードルを下げたい、上場を目指したいという場合は株式会社、コストを抑えてスピーディに起業したい場合は合同会社がおすすめです。
会社概要の策定
会社を設立するにあたって必要な基本情報を決めていきます。
・会社名
・代表
・出資金
・事業目的
・資本金
・決算時期
定款の作成・登記
定款とは、会社運営の指針となる文書のことで、設立時には必ず作成する必要があります。記載する情報はいくつかありますが、絶対に記載しなくてはならない「絶対的記載事項」と、記載しなくても問題ないが記載がないと効力を持たない「相対的記載事項」、法律に反しない範囲で会社が自由に規定できる「任意的記載事項」の3つがあります。
【定款に記載する内容】
・商号(社名)
・目的(事業目的)
・本店所在地
・資本金額(出資財産額)
・発行可能株式総数
・発起人の氏名及び住所
設立するのが株式会社である場合は、「定款の認証」も必要になります。これは、定款の正当性を公証人に証明してもらうことで、公証センターに提出して承認してもらうことが必要です。町田市の企業であれば、多くは立川の公証役場が対応してくれます。
なお、定款は企業の状況に応じて随時変更することができますが、その際には株主総会の特別決議と、法務局への登記変更申請が必要になります。
資本金の払い込み
定款を認証した後、代表者の個人口座へ資本金を入金し、通帳のコピー等を準備します。
登記申請
町田を本店所在地とする法人は、東京法務局町田出張所で登記申請します。登記が完了したら、晴れて法人としてスタートを切ることができます。
設立にかかる費用と期間
会社を設立する際には次のような費用が発生します。
株式会社設立の場合
- 登録免許税:約15万円
- 定款認証費用:約5万2,000円(紙定款)
- 印紙代:4万円(電子定款で不要)
- 合計:約25万〜30万円程度
合同会社設立の場合
- 登録免許税:6万円
- 定款認証:不要
- 合計:6万〜10万円程度
所要期間
- 通常:2週間〜3週間で完了(書類準備含む)
設立後に必要な届出・手続き
会社を設立したら、税務署や健康保険事務所に必要な手続きを行います。
税務署関連
- 法人設立届出書の提出
- 青色申告の承認申請書(青色申告をする場合)の提出
- 給与支払事務所等の開設届出書の提出
都税事務所・県税事務所
- 事業開始等申告書の提出
社会保険・労働保険への加入
- 年金事務所(健康保険・厚生年金)への申請
- 労働基準監督署(労災保険の加入)
- ハローワーク(雇用保険の申請)
これらはそれぞれ、会社設立後5日〜10日以内が提出の目安です。
町田市の創業支援制度
町田市には、起業・創業などのスタートアップ企業を支援するために、さまざまな制度が用意されています。町田市を所在として起業する場合は、ぜひ利用を検討しましょう。
創業支援プログラム「町田創業プロジェクト」
町田市が主導となって、町田商工会議所・町田新産業創造センター(MBDA)・民間創業支援施設(BUSO AGORA)、および地域金融機関と連携して実施する創業支援プログラムです。
対象者
- 起業を考えている方や創業に興味がある方
- 創業から5年未満の個人または法人(個人事業主から法人成りした場合を含む)
支援内容と特典
所定の支援プログラムを受講し、市から認定証の交付を受けることで、以下のような特典を受けることができます:
- 株式会社設立時の登録免許税の軽減(資本金の0.7%から0.35%に)
- 町田市の「創業資金」制度融資の利用(最大1,500万円)の利子分が全額補助に
- 日本政策金融公庫の「新規事業・スタートアップ支援資金」の貸付利率が引き下げられる
- 全国信用保証協会連合会の「創業関連保証」を事業開始6ヶ月前から利用できる(本来は2ヶ月前から)
町田市の融資制度「創業資金」
創業や分社化の際に必要となる運転資金・設備資金に利用できる融資制度です。初めて町田市中小企業融資制度を利用する人が対象で、1事業者1回だけ使えます。
対象者
前提として以下の個別要件を全て満たす者
- 中小企業者又は組合
- 町田市に本店または事業所があること。個人事業主であれば、町田市に居住もしくは事業所があること
- 1年以上事業を継続していること(一部例外もあり)
- 東京信用保証協会の保証対象業種である
- 必要な許認可を受けている
- 町田市に納税しており、納付すべき税金や還付すべき補助金を完納していること
- 反社会的組織と関連がないこと
- 各資金の個別要件を満たしていること
個別要件
基本要件を満たしており、次の要件を満たす者が利用の対象となる
- 新たに町田市内で中小企業者として創業する具体的な計画を有している個人
- 創業した日から5年未満である個人事業主、中小企業者又は組合
- 分社化しようとする具体的な計画を有する会社、または分社化により設立された日から5年未満の法人
創業前であれば、これまで別の事業を行なっていない個人が対象です。創業後であっても創業から5年未満であれば、この融資を利用することができます。分社化の場合も対象で、事業承継を機に創業したという場合は、すでに「事業承継資金」を利用した場合でも「創業資金」を利用することができます。
「創業資金」の概要
資金使途:運転資金・設備資金
融資限度額:1,500万円
融資期間:7年以内(元金据置期間12か月以内を含む)
融資利率
3年以内:年利1.50パーセント
3年超7年以内:年利1.60パーセント
補助利率
3年以内:年利1.30パーセント
3年超7年以内:年利1.35パーセント
個別必要書類
・創業計画書(東京信用保証協会指定の書式)
・法人設立届出書(法人)または開業届出書(個人事業主)
・分社化しようとする会社における履歴事項全部証明書及び定款、分社化により設立された会社における履歴事項全部証明書及び定款(分社化の場合)
まとめ
町田市は、東京都心と神奈川県、どちらにもアクセスしやすい街です。ベッドタウンとして50年以上発展を続けており、多様な生活者層が暮らしていることから、飲食店や小売業といった地域密着型の事業が活況なエリアとなります。都心よりも家賃・賃料の固定費が抑えられることから、これらの業種で起業したいという人にとっては非常に好条件が揃っています。
また、自治体による金銭的支援も充実しているため、その他のエリアと比較して町田市での創業は、地理的優位性・コストのバランスが優れていると言えるでしょう。
執筆者紹介

- 税理士眞﨑正剛事務所 社会保険労務士法人眞﨑正剛事務所
- 東京都町田市生まれ、神奈川県相模原市在住。
慶應義塾大学商学部卒
大学卒業後、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)勤務を経て
平成27年独立開業。
相模原地域を中心に、多くの企業の会社設立を支援。多数の講演実績。
出版書籍に
「会社と家族を守る事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46」
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