- 運転資金 と 設備資金 の違い、あなたはわかりますか?-
個人でも法人でも事業運営を行なっていく場合には、この二つの資金の違いは覚えておくべきです。というのも、事業運営資金は大抵の場合、融資によって補われますが、その融資面談の際に金融機関側から、『運転資金で使うのか、設備資金で使うのか』と、使用用途を聞かれるからです。
違いをしっかり理解していれば、融資担当者との打ち合わせもスムーズになります。本コラムで詳しく解説いたしますので、是非一読ください。
運転資金とは
運転資金とは、事業を続けるために必要な資金です。業種ごとに運転資金の中身は違いますが、商品の仕入代金や人件費、テナント料(家賃)、外注費用などが該当します。
これらは、継続的に発生する資金のため、将来を見据えた事業経営を行っていくには運転資金を如何に確保するかが重要になります。
- 人件費(従業員に支払う給与や一時金等)
- 事業所の維持費(家賃・光熱費・通信費・消耗品費等)
- 広告宣伝費用(チラシ代や名刺の作成料金等)
- 商品や材料の仕入代金
- 外注費用(他所への業務委託料等)
- 税金(企業単位で納付する税金・従業員の社会保険料等)
設備資金とは
設備資金とは、事業をするために必要な設備を購入するための資金です。例えば、工場を作る場合、土地を買い取るために必要なお金や、工場内に設置する機械の購入費などが該当します。
他にも、特許や商標権、保証金、ソフトウェアなどに関する資金も設備資金に該当します。
- 土地や建物といった不動産の購入費
- 営業者や、工場機械の購入費
- パソコンやコピー機、事務机など社内備品の購入資金
- 無形資産設置に関わる費用(会社HPの作成や固定電話の回線設置費用等)
- 賃貸物件の入居資金
- 事業所の改修や改装に要する費用
設備資金と運転資金の大きな違い
(1)自由度
先にも述べた通り、設備資金は設備購入に必要な資金なので、見積書や領収書などを用いて資金使途を明確に説明しなければなりません。融資がされた後も、金融機関担当者は必ず資金使途が正しいかどうかを、領収書の提示を求めたり、場合によっては現地調査を行なって確認します。
融資審査において、設備資金は虚偽申告が一切認められません。費用が見積もり時と違っていた場合には説明が必要になってきます。
運転資金は、設備資金と違って正確な金額を提示するのが難しい面があります。もちろん、金融機関側に妥当性の説明は必要ですが、予定していた金額が変わることもあります。
これらのことから、設備資金の方が自由度が低いと言えます。
(2)設備資金は長期で借りられる
設備を投入したからといって、その成果がすぐに経営状況に反映されるわけではありません。製品を生産する機材を導入しても、製品が一定数売れて企業の利益になるには時間を要します。
そのため、基本的には設備資金の融資を受ける場合には返済期間が長く設定されます。
(3)設備資金は借り入れが高額になりやすい
購入する設備によって変わりますが、多くの場合、設備資金は運転資金と比べて、借入金額が高額になります。当然のことですが、融資の希望金額が高額の場合、融資の判断も厳しいものになります。
よって、設備資金の投入効果や、きっちりとした返済計画を説明し、融資の担当者を納得させなければなりません。
運転資金と設備資金はどちらが融資を受けやすい?
基本的に融資の受けやすさは同じです。名目が変わるだけで融資の受けやすさが変わることはありません。
どちらの場合も、資金がどのくらい必要なのか、何に使うのか、どうやって借りたお金を返していくのか、をしっかり説明しなければなりません。どちらが融資を受けやすいかと考える必要はないでしょう。
ただ、『設備資金で融資を受けたのに、運転資金で使う』ような行為はNGです。バレれば金融機関側からの信用が失墜し、後の資金繰りに多大な影響を及ぼします。(資金の使い道を確認する方法はたくさんあり、必ずバレます。絶対にやめましょう。)
まとめ
運転資金と設備資金の違いがお分かりいただけたでしょうか。
二つの違いは、個人事業主でも法人経営者でも融資を受ける際には必ず知っておきたい事項です。よく理解した上で、融資を申し込んでください。
なお、自分1人で計画を立てて融資を受けることが難しい場合、融資サポートを得意とする税理士に相談しましょう。特に資金調達に慣れていない創業期には不安も付きまとうでしょう。
そのような場合でも、経験が豊富な専門家からアドバイスを受けながら動けば安心です。是非、ご検討ください。
執筆者紹介
- 東京都町田市生まれ、神奈川県相模原市在住。
慶應義塾大学商学部卒
大学卒業後、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)勤務を経て
平成27年独立開業。
相模原地域を中心に、多くの企業の会社設立を支援。多数の講演実績。
出版書籍に
「会社と家族を守る事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46」
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