社会的信用アップや資金調達方法の拡大、節税等を見込んで、個人から法人化されるケースも多いです。大抵の場合は、事業をそのまま引き継ぐことになるので、法人化に伴い、個人事業廃止の手続きをしなければなりません。
具体的には、国や都道府県に対して「個人事業を廃止したこと」を届け出る他、廃止した年度分の確定申告等を行います。
個人事業主を廃業する時の届出
事業を廃止する際には、国や都道府県に納税義務や徴収義務がなくなった旨を通知します。
届出書は主に以下のものがあります。なお、各書類は税務署及び国税庁のホームページでダウンロードが可能です。
- 個人事業の廃業等届出書
- 青色申告の取りやめ届出書
- 消費税の事業廃止届出書
- 給与支払事務所等の廃止届出書
- 所得税および復興特別税の予定納税額の減額申請書
(1)個人事業の廃業届出
廃業した日から1ヶ月以内に「個人事業の廃業等届出書」を納税地である税務署に提出します。
事業所得や不動産所得、山林所得を得ている個人事業主に提出義務があります。
なお、廃業届出の書類を提出しなくともペナルティはありません。ただし、放置すれば、事業を行っているのに無申告状態だと判断され、税務署から通知書が来る可能性があります。
(2)青色申告の取りやめ届出書
青色申告で確定申告しているのであれば、事業を廃止する年の翌年3月15日までに「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を所轄税務署に出します。
(3)消費税の事業廃止届出書
個人事業主でも消費税を支払っていた(課税事業者であった)場合、「事業廃止届出書」も提出します。これも提出先は所轄の税務署になります。
期限は特に決まっていませんが、廃業してから1ヵ月以内に出しましょう。
(4)給与支払事務所等の廃止届出書
個人でも従業員を雇って給与を支給していた場合は、廃業日から1ヶ月以内に「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」を所轄の税務署まで提出します。
(5)所得税および復興特別税の予定納税額の減額申請書
前年分確定申告の納税額が、15万円以上の場合、該当金額の3分の1を7月1日から7月31日に第一期分として納め、11月1日から11月30日までに第二期分として納めます。これを予定納税の義務と言います。
本年の所得が前年に比べて減ることが予見される場合、予定納税額の減額を申請することができます。これは廃業をする場合も同じです。
提出期限は、二つの段階に分かれており、第1期分と第2期分の減額申請をするなら、7月1日より7月15日までに、第2期分のみ減額申請をするのであれば、11月1日より11月15日までに行います。
廃業届を出さなくても良いケース
個人事業主から法人化しても廃業の届出が不要な場合もあります。
- 個人事業主として事業の一部を継続するとき
- 不動産所得が発生するとき
個人で行っている複数事業の一部のみを法人事業として引き継ぐ場合、個人事業を廃業したわけではないので、廃業届は不要です。
また、個人から法人に対し、自宅を貸し付けるなどして、不動産所得が発生するようなケースでも、廃業に関する届出の全てを提出する必要はありません。
個人事業主としての確定申告
廃業が決まったら、個人事業主としては最後の確定申告を行います。事業年度最終の確定申告は所得税が翌年3月15日まで、消費税は翌年3月31日までに行います。
なお、廃業後にかかる経費は所得税法の特例によって事業経費として算入できますが、全てではありません。算入対象かどれかわからない方は、税理士に相談しましょう。
個人事業主の廃業のタイミング
個人事業主は廃業日の明確な規定がありません。よって、時期は事業主都合で決められます。
法人化の際の廃業で良いタイミングは、会社として営業する前日です。会社が実際に業務を開始するのは、会社設立から約1ヶ月後です。これは、設立登記完了後、税務署へ法人設立届出書等を提出し、銀行口座の開設等の手続きがあるからです。
よって、設立からタイムラグを見越した上で実際の会社営業開始日の前日に廃業するのが良いでしょう。
なお、年度の途中に廃業したとしても確定申告は必要です。そのため、年末間際に廃業を考えている方は年内で廃業するようにすれば、手続きが煩雑にならずに済みます。
個人事業主の廃業費用
個人事業主が廃業する場合、法人の解散と違って、手続きに法定費用はかかりません。
ただし、法人化に伴って借りている事務所を別のものにするといった場合は、賃貸物件の原状回復費用などの諸経費がかかってきます。
まとめ
個人事業主が事業を廃業するのは、法人と違って容易です。
会社法があるので、法人の事業廃止には商業登記で「解散」「清算」という手続きをしなければなりませんが、個人事業主にはそれらが適用されない分、比較的簡単に事業を廃止できるのです。
ただ、法人化の場合は、廃業の手続きに加えて、会社設立手続きが出てきます。時間をかけたくない場合は、専門家へサポートを依頼した方が良いでしょう。
「 会社設立のやり方がわからない」「なかなか時間が取れない」こんなお悩みを抱えている場合は是非、相模原・町田・座間・海老名会社設立支援センターまでご相談ください。手続きの代行はもちろん、設立後の節税対策や資金調達など、支援実績が豊富な税理士法人がワンストップで問題を解決いたします。
執筆者紹介
- 東京都町田市生まれ、神奈川県相模原市在住。
慶應義塾大学商学部卒
大学卒業後、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)勤務を経て
平成27年独立開業。
相模原地域を中心に、多くの企業の会社設立を支援。多数の講演実績。
出版書籍に
「会社と家族を守る事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46」
最新の投稿
- 会社設立コラム2024年11月21日「税務調査」とは? 流れと対策、必要書類について解説!
- 会社設立コラム2024年10月25日税務調査の対象になりやすい法人・個人事業主の特徴
- 会社設立コラム2024年10月21日「はぐくみ企業年金」とは? 事業者が知っておくべき制度の詳細と、メリット・デメリット
- 会社設立コラム2024年9月25日税理士紹介会社とはどんな会社? 利用して問題ない?