会社設立コラム

法人化 したら「出張旅費規程」を作って節税に繋げましょう

- 法人化の際に「出張旅費規程」を作成しましょう -

取引先との会合や仕入れ品の視察などで、出張の機会が多くなる経営者様も多いでしょう。もし、会社を持っていたり、法人化されるのであれば、「出張手当制度」が節税に役立ちます

出張手当とは、役員や従業員が出張する際に、予め決まった額が会社から支払われるものです。「出張旅費規程」を作成し、その中の規定として定めておけば、日当を経費にすることが可能です。おまけに日当は、もらう方のポケットマネーになるにもかかわらず、個人の所得扱いにもなりません。

このようにメリットが大きいので、出張旅費規程は是非制定しておくべきなのです。ただし、導入に際しては注意点もあります。

本コラムでは、出張旅費規程作成によるメリット・デメリットに加え、作成時の注意点についても解説していきます。

出張旅費規程とは

出張旅費規程は、出張にかかる交通費や宿泊費、日当などの諸経費の取り扱いについて定めた規程です。作成できるのは法人のみです。(制定するかどうかは法人の自由です。)

なお、内容や手当の金額に明確な基準は存在しませんが、役職ごとに常識的な金額を設定する必要があります。

また、原則すべての社員が対象となりますから、規定は就業規則の一部として扱われます。つまり、作成後は労働基準監督署への届出が必要となります。(出張旅費規程を変更する場合も、労働基準法で定められた手続きが必要になります。)

制定するメリット

(1)日当が経費として計上されるので節税になる

対象者に支払われる日当は、通常の給与ではなく経費として損金算入されます。つまり、非課税のお金なので、会社側にとっては消費税、法人税、住民税の節税となるのです

受け取る側にとっても、「経費として受け取るお金」ですので、所得税や住民税は非課税になります。加えて、日当は渡し切りですから、出張中に使われなくても、非課税の収入として受け取れるのです

(2)日当は社会保険料の負担にもならない

日当は給与ではないので、給与額から算出される社会保険料もかかりません

社会保険料は多くの場合、会社と個人とで折半ですから、社会保険料の負担にならないことは、会社・個人双方にメリットがあることになります。

デメリット

全従業員が規定の対象となるので、場合によってはコスト増となって資金繰りが悪化するリスクがあります。そのため、規定の作成は、ある程度の余裕がある状況下で検討する方が良いでしょう。

ただし、社長1人で運営するような会社であれば、そこまでリスクを考える必要はありません

規定の注意点

(1)従業員にも一律適用すること

既に述べましたが、規定の対象は全従業員です。役職ごとに金額を区別するのは構いませんが、役員だけ旅費規程が使えるのはNGです。

(2)日当は常識的な金額で

日当は同規模・同業種の他の会社と比べて高すぎなければ大丈夫です。

「産労総合研究所」が「国内・海外出張旅費に関する調査結果」を出していますから、そちらを参考にするのも良いでしょう。

なお、社長1人の会社でも、日当は役職ごとに分けておきましょう。分けた方が税務署から否認される可能性は減りますし、今後従業員を雇うことも想定した方が良いからです。

(3)日帰り出張と宿泊を伴う出張とで基準を分ける

日帰り出張よりも宿泊を伴う出張の方が、費用が余計にかかることが多いので、分けて設定しておきます。

(4)交通費・宿泊費についても定めておく

交通費・宿泊費については、実費精算もしくは定額精算とすることが可能です。実費精算なら、領収証と引き換えにその代金を受け取るという方法ですが、定額精算なら、出張場所ごとに金額を定めてその金額通りに精算します。

交通費は役職ごとに差をつけられます。例えば、新幹線なら社長・役員クラスはグリーン車可で従業員は普通車といった具合です。宿泊費も上限額を役職ごとに差を付けることが可能です。

(5)出張報告書を作る

日当の支給には、領収書は不要です。そのため、税務署への証拠となる書類として「出張報告書」を別途作成しておきます。

書式の決まりはありませんが、出張先、出張目的、日程、交通手段と交通費、宿泊費、支払われた日当などの記録はきちんと残しておきましょう。

まとめ

出張旅費規程は節税面でのメリットが大きいので、これから法人化を検討される方には、是非押さえていただきたい事項です。

ただし、出張手当を常識的な額に設定すること等、規程を定める際の注意点もあります。詳しいことがお聞きになりたい場合は、弊法人までご相談ください。


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執筆者紹介

眞崎 正剛
眞崎 正剛税理士・社会保険労務士 眞﨑正剛事務所
東京都町田市生まれ、神奈川県相模原市在住。

慶應義塾大学商学部卒
大学卒業後、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)勤務を経て
平成27年独立開業。
相模原地域を中心に、多くの企業の会社設立を支援。多数の講演実績。
出版書籍に
「会社と家族を守る事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46」