確定申告には、「青色申告」と「白色申告」という2つの方法があります。
簡単に違いを説明すると、青色申告は帳簿に厳密性を求める代わりに控除額が大きく、白色申告の帳簿は簡易的でよいけれども控除額が小さい、と言えるでしょう。
では、確定申告をするにあたって、双方にどのようなメリット・デメリットがあるのか、解説していきましょう。
白色申告は、簡単だが優遇がほぼない
白色申告は比較的シンプルで、初心者でもハードルが低い申告方法です。白色申告をするための条件はなく、誰でも選択することができます。
メリット1.提出書類がシンプル
白色申告の場合、提出する書類が少なく、以下の2種類ですみます。
- 確定申告書B
- 収支内訳書
ですが、白色申告を選択するメリットは、この点しかないとも言えます。
デメリット1.「青色申告特別控除」が受けられない
青色申告では、条件によって最低10万円〜最大65万円の控除が受けられます。しかし、白色申告ではこうした控除はありません。節税という観点から、税制優遇が受けられないのは大きなデメリットだと言えます。
デメリット2.基本的には赤字を繰り越せない
白色申告では、青色申告のように赤字(損失)の繰り越しができません。 仮に赤字(損失)が計上されたとしても、その年で切り捨てられます。
デメリット3.専従者の給与の全額は経費として計上できない
青色申告であれば、専従者(家族)へ支払う猶予を全額経費として計上できるのですが、白色申告では一定金額を所得から控除するだけとなります。
- 配偶者なら86万円、その他親族は50万円
- 所得÷(専従者人数+1)
計算式は上記のうち、どちらか低い方を採用します。
青色申告は、複雑だが優遇の多い制度
青色申告は、白色申告とよりも複雑な帳簿の記録と申告が求められますが、それに見合った多くの税制上のメリットがあります。
メリット1.最大65万円の青色申告特別控除を受けられる
青色申告にして、複式簿記による記帳を行い、貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付すると、最大65万円もしくは55万円の特別控除が受けられます。なお、簡易(単式)簿記での提出であっても、10万円の控除を受けることができます。
ただし、確定申告の提出期限である3月15日を過ぎて申告をした場合は、65万円・55万円控除の対象外となり、10万円控除となってしまうので注意しましょう。
メリット2.赤字を3年間繰り越せる
青色申告をすれば、今年発生した赤字を翌年以降に繰り越すことができます(個人事業主であれば最長3年、法人であれば最長9年)。
白色申告では赤字を繰り越すことができなかったので、これも大きなメリットになります。
メリット3.専従者の給与を全額必要経費にすることができる
事前に届出を提出することが必要ですが、青色申告であれば、家族に支払った給与は全額経費として計上することができます。
実力に見合っていない給与を支払うのは良くありませんが、金額の縛りはないので、節税効果が高いメリットです。
メリット4.減価償却の特例を受けられる
通常、業務のために購入した物品は、10万円以上になると「減価償却資産」として一定のルールに従い、数年に分けて経費に計上する必要があります。
ただし、青色申告をする人は、その額が「30万円未満」まで引き上げられます。30万円未満の物品であれば、その年に一括して経費計上できるということです。これも、大きな節税効果をもたらすメリットの一つとなります。
デメリット1.最大控除を受けるには複式簿記での記帳が必要
青色申告の最大のデメリットは、帳簿作成に手間がかかるということです。最大65万円の控除を受けるには、正規の原則に則って、複式簿記による記帳が求められるので、初心者にとっては非常に難易度が高いものとなります。
ただし、きちんと帳簿をつけること自体は、経営状態を正確に把握することにつながるので、必ずしもデメリットとは言えません。
デメリット2.事前に「所得税の青色申告承認申請書」を提出しなくてはいけない
青色申告を行うには、税務署への事前の申請が必要です。その年の3月15日までに「所得税の青色申告承認申請書」を提出する必要があります。
青色申告をすると決めたら、その年の早い段階から準備をしておきましょう。
白色申告と青色申告、どちらを選ぶべき?
どちらの申告方法を選ぶべきかについては、個々の事業規模や事業の実態(専従者の有無など)、税制上のメリットをどれだけ受けたいかによって変わってきます。
ただし、青色申告における税制優遇は節税効果が非常に高いので、創業した法人や、これから長く事業を続ける個人事業主の方は、青色申告を選ぶのが一般的です。
初年度は白色申告であっても、次年度以降はぜひ難易度をあげて、青色申告に挑戦してみることをおすすめします。もし、不安だということであれば税理士に依頼して、きちんと帳簿をつけてもらうことも大切です。
執筆者紹介
- 東京都町田市生まれ、神奈川県相模原市在住。
慶應義塾大学商学部卒
大学卒業後、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)勤務を経て
平成27年独立開業。
相模原地域を中心に、多くの企業の会社設立を支援。多数の講演実績。
出版書籍に
「会社と家族を守る事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46」
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