会社設立コラム

社長だけの「一人会社」 その特徴とは【 会社設立 ・ 法人化 】

社長

一人会社」とは、文字通り会社の中に経営者の社長がひとりだけいる会社です。社員はもちろん、他の役員もいませんが、法人格を有しています。

以前は、株式会社の設立には3名以上の取締役が必要でしたが、2006年の新会社法によって、1人でも設立可能となりました

その結果、現在までに一人会社は増え続けています。

個人事業主と何が違うのか

一人会社と個人事業主では、どちらも「一人である」という部分以外は全く異なります。

個人事業主はあくまで個人として責任を負うのに対し、一人会社は法人として責任を負います。事業によって生じた資産は会社のものですから、役員報酬や配当金以外のお金を勝手に使えません。逆に負債も会社のものですから、社長個人が返す必要もありません。(ただし、株主として出資した資本金を失う可能性はあります。)

一人会社のメリット

(1)節税の選択肢が増える

個人事業主だと、青色申告事業者であれば3年間は損失繰越が可能ですが、一人会社の場合には、この損失繰越が最大9年まで延びます。

また、生命保険料を経費にしたり、出張旅費や社宅など、節税方法の幅も個人と比較して広くなります

(2)責任の範囲が定まる

前述したように、法人の場合は、事業で発生した損失は会社の責任なので、経営者の責任は「出資金の範囲」に留まります

会社の資産と私的財産は分けられるので、出資金以上の金額を補填する必要はありません。

(3)信用度

本店所在地や設立年月日・目的・資本金・役員などの重要事項が、登記によって公示されている以上、個人事業主に比べて法人の方が、信頼性は高くなります

信用度が高まることで融資や出資といった資金調達もしやすくなります。

また、個人事業主と法人格を持つ会社が同じ条件で求人をしていたら、求職者は会社へ応募する率が高まるはずです。そのため、従業員の雇用という点でも有利です。

(4)身軽である

これは通常の会社と比較した場合のメリットとなります。一人会社はかなり身軽であると言えます

まず、他の従業員がいないので、給料などの固定費が削減できます。また、一人しかいない分、意思決定も速いでしょう。(仮に経営者が複数いる場合、経営方針を巡って対立する可能性が出てきます。揉めてしまえば、事業が停滞する怖れもあります。)

そして、株主総会も、みなし決議・報告という制度を使えば開催を省略できます。(ただし、議事録作成は必須です。)

注意点

(1)福利厚生が認められにくい

福利厚生費とは会社が給料や賞与以外に従業員のために使った費用のことです。例えば、従業員の慰安を目的とした温泉旅行の費用等が該当します。

これらは、経費計上できますが、一人会社の場合は、そもそも従業員が存在しないため、福利厚生という概念がありません。また、個人目的の費用と区別しにくいという理由から、一人会社の社長の福利厚生は認められにくいのです

(2)健康保険や厚生年金の加入義務

一人会社でも法人であるため、社会保険への加入義務が生じます。

保険料を気にして加入せずにいた場合、調査時に未加入が発覚すれば過去の未納保険料の納付を求められ、さらに罰則が適用される場合があります。

中には加入義務を知らなかったという一人社長もいます。一人会社でも社会保険加入は原則的に必須の手続きですから、忘れないようにしましょう

(3)税務や労務上のミス

一人会社を立ち上げると税務や労務はすべて自分で行わなければなりません。

法人の税務と労務は専門知識を要するので、作業に時間がかかりますし、手続きを誤って法律違反となる可能性もあります。

一人の場合は、大きなミスが発生しても誰も指摘してくれません。リスクを回避するために税理士等の専門家を顧問に雇った方が良いでしょう。

まとめ

一人会社の特徴や注意点を解説しました。

会社設立には費用がかかりますが、個人と比較して、節税・融資・求人など様々な点でメリットがあります。そのため、個人事業主としてある程度、事業が大きくなったタイミングで一人会社への変更を検討すると良いでしょう。

ただし、デメリットやリスクもあるので、安易に決めるのではなく、一度専門家にご相談ください。弊法人では一人会社の設立の実績が多数あり、さまざまな状況を想定して、最適なプランをご提案いたします。是非ご相談ください。


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執筆者紹介

眞崎 正剛
眞崎 正剛税理士眞﨑正剛事務所 社会保険労務士法人眞﨑正剛事務所
東京都町田市生まれ、神奈川県相模原市在住。

慶應義塾大学商学部卒
大学卒業後、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)勤務を経て
平成27年独立開業。
相模原地域を中心に、多くの企業の会社設立を支援。多数の講演実績。
出版書籍に
「会社と家族を守る事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46」