個人事業主が法人化する際には、個人所有だった資産を法人で使うこともあります。しかし、法人と個人では人格が異なるため、資産や負債が自然に引き継がれることはありません。
法人化で引き継がれる主な資産
(1)棚卸資産
棚卸資産は、販売目的で一時的に保有する商品や製品・原材料・仕掛品の総称のことです。個人事業主時に抱えていた製品や材料の在庫は「棚卸資産」となり、法人に引き継がれます。
ただし、前述したように法人と個人では人格が異なるため、棚卸資産は個人から法人へ売却されたものとなります。(個人事業主は後の確定申告で、売上計上する必要があります。)
その際の取引は基本的に通常の価格にて行いますが、70%未満の場合は低額譲渡となり、別途の税金が課せられる怖れがあります。なので、通常の販売価額の70%以上の金額で売上に計上しましょう。
なお、型落ちや劣化が激しい等、資産に価値の低下が見られる場合は処分可能価格(時価)が適応されます。
(2)減価償却資産
減価償却資産とは、事業用資産で購入価額が1単位当たり10万円以上で耐久性のある資産を指します。車、コピー機、パソコン、ソフトウェア等が該当します。
これらの設備品は法人に時価で譲渡しなければなりません。車やパソコンのように、中古品の市場価格がすぐにわかるケースは良いですが、特殊な機械等は算定が難しく、実務上の対応も考慮すると専門家に確認をした方が良いでしょう。
なお、個人から取得した固定資産は中古資産ですから、新品の耐用年数とは違って短い期間で償却することが可能です。
(3)債権
売掛金などの債権は手続きの面倒さを考慮して、個人側で処理する方も少なくありません。
債権を引き継ぐか引き継がないかは、現状に合わせて判断しましょう。税務の問題も絡むので、税理士に相談しながら進めることを推奨します。
資産の引き継ぎ方法
前章で引き継がれる主な資産を説明しましたが、その資産を引き継ぐには、以下の四つの方法があります。
(1)売却
個人が所有する資産を法人に売却する方法です。売られたものは会社名義になりますが、個人側では売上を計上し確定申告しなければなりません。個人法人間の譲渡のため、売却に見合うお金を個人に支払う必要があります。(安すぎれば、定額譲渡として贈与税の対象となります。)
なお、会社設立直後で資金が不足しているのであれば、法人から個人への未払金として処理しておきます。
(2)賃貸借
名義を個人のままとし、法人に貸す方法。この方法を選択した場合、会社から定期的に賃貸料が支払われることとなります。(この際の賃料は相場をベースとします。)
名義変更をする必要はありませんし、法人サイドも賃貸料を経費に算入できます。
ただし、毎年不動産収入が発生しますので、個人側で毎年確定申告をしなければなりません。
(3)現物出資
会社設立の際、資本金を現金ではなく資産で出資する方法です。その見返りとして、株式を取得します。
(4)贈与
贈与とは無償で財産を移転させることをいいます。贈与する人のことを「贈与者」、受ける人のことを「受贈者」と呼びます。贈与は個人から個人でも、個人から法人でも成立します。
資産を個人から会社に贈与したなら、経済的価値のあるものを無償で受け取っていることになりますから、受益に応じて贈与税を支払うことになります。
贈与税の支払い義務が生じた場合、税務署に申告・納付を行わなければなりません。
それぞれの資産の特徴を知って有効な引き継ぎを
今回は法人化した際の資産引継ぎを解説させていただきました。
資産の引き継ぎ方法は説明した通り、主に四つとなりますが、実際に行われているのは売買か賃貸です。
これは二つの方法は使い勝手が良いからです。つまり、他の二つは手間がかかって面倒な部分があるのです。
資産の引き継ぎは状況を冷静に見極め対処するようにしましょう。もし不安な場合は、税理士に相談すると良いでしょう。
法人化の手続きは専門家のサポートを
法人化の手続きには以下のものがあります。
- 商号の確認
- 定款の作成
- 資本金の用意
- 設立登記
これらの手続きをご自身でやろうとすると、手間がかかります。会社設立には専門知識や経験が必要だからです。慣れていない分、時間は多くかかってしまいます。
失ったお金は取り戻すことはできますが、時間はそうはいきません。法人化の手続きや税務に時間を取られて、本業を疎かにすることは、ビジネスの目線から考えれば良いことでは無いでしょう。
プロに任せる最大のメリットは、なんといっても時間の節約。本来の業務に集中しながら、諸々の手続きが完了していきます。よって、会社設立時に税理士のサポートを受けることは非常に有効です。
資産の引き継ぎの相談(税務処理も含めて)もできますので、是非利用しましょう。
「 会社設立のやり方がわからない」「なかなか時間が取れない」こんなお悩みを抱えている場合は是非、相模原・町田・座間・海老名会社設立支援センターまでご相談ください。手続きの代行はもちろん、設立後の節税対策や資金調達など、支援実績が豊富な税理士法人がワンストップで問題を解決いたします。
執筆者紹介
- 東京都町田市生まれ、神奈川県相模原市在住。
慶應義塾大学商学部卒
大学卒業後、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)勤務を経て
平成27年独立開業。
相模原地域を中心に、多くの企業の会社設立を支援。多数の講演実績。
出版書籍に
「会社と家族を守る事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46」
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