法人化 の際には本店所在地を決める必要があります。
会社というと一般的には事務所を構えて営業するイメージがありますが、ご自身の自宅を選ぶ方もいらっしゃいます。
「会社なのに自宅でも良いのか?」とも思われるかも知れませんが、実は自宅の住所であっても、会社を作ることは可能なのです。
ただし、自宅で法人登記を行う場合は、いくつかのデメリットも生じます。そこで本コラムでは、自宅で法人登記することの是非や、どんな点に注意すべきなのかを解説していきます。
法人登記で自宅を選ぶことは法的に問題なし
冒頭でも既に述べましたが、法人を設立する際に、自宅の事務所を本店所在地として登録することは法人税法上も、登記上も問題ありません。
自宅が一軒家ではなく、マンションの一室だったとしても法人登記ができます。(ただし、管理規約に違反しないこと・オーナーの許可を得られることが条件です。)
そもそも本店所在地として登録できる住所には、特別なルールはありません。 オフィスで法人登記しても、自宅で法人登記するのも、なんら変わりはないのです。
よって、事業に適した場所を選んで良いのです。
会社を自宅にするメリット
(1)家賃や光熱費の一部を経費にできる
賃貸物件を自宅にしている場合、支払う家賃の一部を会社の経費にできます。また、自宅の光熱費などに関しても同様です。
ただし、家賃や光熱費を経費として処理するには、按分計算をする必要があります。
実際に自宅で仕事をしていても、自宅の全てを仕事のために利用しているわけではないからです。経費にできるのはプライベート以外の部分だけです。
例えば、自宅の半分の面積を占める部屋を会社のオフィスとして使っているのであれば、家賃の50%を経費として処理します。
按分計算の方法に基準はなく一番経費計上が大きくなる方法を採用して構いませんが、税務署に対してきちんと説明できるようにしておきましょう。
そうでなければ、税務署による税務調査が行われた際に、経費処理を否認されてしまい、修正申告を求められる怖れがあります。(自宅兼オフィスなのに、家賃を全額経費にするのは問題外です。)
(2)資金がかからない
オフィスを借りる必要がなくなるため手間とコストの削減となります。
法人規模や事業内容次第では、オフィスがほとんど不要の場合もあるでしょう。その場合は、オフィスを借りずとも、自宅を事務所と兼用にしてしまえば、家賃の負担も軽くなります。
なお、会社の設立が完了している状態で事務所を探す場合と、会社を作る前に本店所在地となる事務所を探す場合では難易度が違います。
会社ができていない状態だと、オフィスを貸す側は、本当にお金を払ってくれるのかどうか疑わしいと考えるからです。
なので、将来的には事務所を借りようと考える人も、まずは自宅を本店所在地として登記をする場合があります。
会社を自宅にするデメリット
(1)取引先や金融機関からの信頼感
自宅を法人登記する会社の場合、信頼確保が難しい場合があります。
取引相手が登記簿謄本を取ったときに、会社がオフィスビルかアパートの一室では、前者の方が印象は良いでしょう。自宅住所と同一になっているような場合、公私混同していないか、正しい経営がされているか等と疑われてしまいます。
なお、社長自身の財布と会社の財布が一緒になっているのも信頼を損ねます。
(2)自宅を外部に知られてしまう
会社のホームページを開設する場合、本社の住所も掲載するので、自宅と本店所在地が共通になっている場合は、プライベート面での不安が出てくるでしょう。
特にご家族と一緒に暮らしているなら、自宅住所が公開されることで、家族にも不安が広がります。
なお、自宅が本店所在地と別でも、会社の代表となる方の住所は商業登記の記載事項に含まれるので、法務局で登記簿謄本を取得すれば誰でも社長の住所を知ることができます。
ただし、登記簿謄本を取得するのとホームページを見るのでは差があるので、やはり、自宅を本店所在地にする場合の方がリスクは高いと言えるでしょう。
注意すべき事項
(1)自宅が賃貸・分譲の場合
自宅が賃貸マンションやアパートであり、そこを本社登記することは可能ですが、登記の前に必ず管理規約や契約書を確認しましょう。
というのも、もし「登記禁止・住宅専用」などの規定がある場合は、そちらが優先されるからです。文言が入っているにも関わらず登記してしまうと、違反となります。
最悪の場合、退去となる可能性も出てきます。
(2)許認可や用途地域
許認可や施設条件がある業種の場合、登記できても条件を満たさないと営業できないケースがあります。(居住部分とは明確に区分した事務スペースを確保することや、玄関に商号を表示させる等。)
また、所在地の「用途地域(土地利用を定めたもの)」によって営業不可な業種や規模制限がある場合もあります。
(3)住宅ローン減税
住宅ローン減税は事業用の土地・建物については対象外となります。
契約にも、「居住用でなくなった場合には、期限の利益を喪失する」と記載されている場合が多く、本社登記によって事業用に転用されたと判断され、契約違反となる可能性があります。
まとめ
自宅を本店所在地として登記することはできますが、注意すべき事項もたくさんあります。
どうしても自宅で会社を立ち上げる場合は、事前に管理規約や契約を確認し、様々なデメリットや注意点もしっかり考慮した上で決定しましょう。
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執筆者紹介
- 東京都町田市生まれ、神奈川県相模原市在住。
慶應義塾大学商学部卒
大学卒業後、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)勤務を経て
平成27年独立開業。
相模原地域を中心に、多くの企業の会社設立を支援。多数の講演実績。
出版書籍に
「会社と家族を守る事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46」
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