会社設立 には法人名や資本金など、決めなければならない項目が沢山ありますが、「役員」も重要な検討事項です。
会社法では、株式会社を設立したい場合は取締役が1人いれば良いこととなっています。(以前では、取締役は3人、監査役が1人必要でしたが、現行法では役員構成も柔軟に決められるようになっています。)
ただし、どんな人でも取締役になれるわけではありません。
会社の役員とは
(1)役員の役割
会社の経営方針を立てる、業務を監督するなど、重い責務を担っているのが役員です。
会社法では、役員は、取締役・会計参与・監査役を指します。
取締役は会社の方針、業務内容を決定します。会計参与は、貸借対照表といった会計書類を作成します。監査役には、取締役を監視する役割があります。
株式会社を起こす場合、取締役(代表取締役)が1人必要ですが、もし取締役会を設置するなら、3人必要になります。(監査役も1人必要です。)
取締役会とは、「会社の業務執行の意思決定機関」です。具体的には会社所有の財産の処分や、支配人の他選任及び解任など、会社にとって重要な事項を決めるものです。
取締役会を設置する目的は経営判断の多角化や内部統制にあります。取締役会を設置していれば、「広い視野をもっていること」「コンプライアンスを重視していること」を体外的にアピールできます。
ただし、意思決定を複数で行うため、意見がまとまりにくい場合もあります。その他、役員報酬の支払いコストの増加や、株主権限が取締役会非設置の会社に比べて弱くなりやすいという欠点もあります。
(2)役員の任期
役員には任期があります。任期終了後に、引き続き役員職に就く場合、「重任」の登記をしなければなりません。もし、任期途中で辞める場合は「辞任」登記が必要です。
登記手続きは面倒な上に、印紙代もかかります。そのため、取締役が1人もしくは同族の会社であれば、任期を最長の10年にしておく方が良いでしょう。(役員のうち、取締役の任期は原則およそ2年、監査役の任期はおよそ4年となっています。)
役員の任期を10年にする方法についてはこちらを参考にしてください。
発起人=会社の役員ではない
会社の発起人は「会社設立の発案者」「資金提供者」であり、役員は「会社運営を行う人」です。
もちろん、発起人が役員となることもできますが、発起人と会社役員は異なるものです。(発起人が役員にならないのであれば、会社設立後は一株主となります。)
発起人は、会社設立の際には、会社概要の決定、定款作成、資本金の支払い、登記など必要な手続きを行います。その中には、取締役などの役員の選任も含まれます。
役員になれない人とは
取締役を誰にするのかはある程度自由に選定できますが、誰でもなれるというわけではありません。法的には「欠格事由」があり、該当者は役員になる資格がないのです。(ここでは取締役の欠格事由について述べます。)
(1)法人
株式会社、合名会社、その他の団体といった法人は役員になれません。ただし、持分会社の役員になることはできます。
(2)成年被後見人または被保佐人
成年被後見人とは、認知症などを理由に「判断能力を欠いている」とされた方です。被保佐人も支援の必要度の違いはありますが、判断能力に問題がある方を指します。
(3)法律違反者
会社法、中間法人法、証券取引法、民事再生法、外国倒産処理手続きの承認援助に関する法律、会社更生法、破産法に規定される罪を犯し、刑の執行終了から2年が経過していない場合は、取締役になれません。
なお、上記以外の犯罪により禁固以上の刑に処せられている場合も、刑の執行終了まで(またはその執行を受けることがなくなるまで)は取締役になれません。(ただし、執行猶予中の方は対象外。)
未成年者や破産者でも役員になれる
先の欠格事由に該当しなければ、誰でも取締役になれます。
実は未成年の方や外国籍の方でも取締役になれるのです。(ただし、未成年者が取締役になるには、法定代理人(親権者)の同意が必要です。)
また、破産者であっても取締役になることができます。
ただ、破産者はブラックリストに登録されている方が多いので、代表者の個人補償が条件となる融資制度の利用はできないので注意してください。また、体外的な信用を下げてしまう恐れもあります。
欠格事由に該当しないのであれば役員にはなれるものの、ビジネスの観点から役員選定は慎重に行うべきです。
まとめ
役員選定は会社設立を行う際の重要な検討事項です。
一人会社であれば悩む必要もありませんが、役員を複数抱えるような会社や、発起人が役員とならないケースでは、十分に検討を重ねた上で適任者を選びましょう。
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執筆者紹介
- 東京都町田市生まれ、神奈川県相模原市在住。
慶應義塾大学商学部卒
大学卒業後、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)勤務を経て
平成27年独立開業。
相模原地域を中心に、多くの企業の会社設立を支援。多数の講演実績。
出版書籍に
「会社と家族を守る事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46」
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