一人で会社を立ち上げる場合もあれば、二人以上で会社を立ち上げる場合もあるでしょう。複数人での立ち上げとなれば、取締役も複数になる可能性は高いです。
役員の任期は原則およそ2年となりますが、考え方や方向性が変わったり、会社にとって不利益な行動を取られたりしたら任期の途中であっても「辞めてほしい」となるケースはあるはずです。(任期満了により取締役を辞めるのであれば「退任」です。)
役員は任期の途中でも辞めさせることができます。これは「解任」と言います。
解任は簡単にはできず、決められた過程を経る必要があります。
役員の解任は辞任とは違う
- 会社の方針と合わなくなった
- 役員として力不足
- 他の役員の都合
等々、任期満了までに役員を辞めて欲しいケースはたくさんあります。
冒頭でも述べたように任期の途中で役員を辞めてもらうことは「解任」と言います。これは、その人自らの意思で辞める「辞任」とは違います。株式会社であれば、解任とは他の株主に辞めさせられることを指すのです。
つまり、該当の役員を辞めさせるには
「解任の手段を取る」か「辞任してもらう」か「任期満了の退任まで待つ」の三つのどれかを選択します。
解任には損害賠償請求のリスクもある
もちろん一番良いのは、辞任してもらうことです。辞任であれば、辞任届を受け取った後で登記変更のみをやれば良いからです。(定款に定められた役員の数を割る場合は、後任の選出もしくは定款変更が必要になります。)
しかし、辞任してもらうには本人の意思が必要となります。逆に辞任する意思がなければ実現しません。
では、解任という手段に進みますが、解任に正当な理由がない場合は損害賠償の請求をされる可能性があります。
正当な理由に当てはまるものは以下の通りです。
- 解任される人に不正行為、定款又は法令に違反する行為があった
- 経営に失敗して会社に大損害を与えた
- 客観的に見て将来的に会社に損害を与える可能性が高い
要するに、第三者から見て明らかに解任される理由がなければ、リスクを負うことになります。他の役員と方向性が違うというだけでは弱いのです。
こういったことも踏まえて、会社設立時の役員の数および選任は慎重に検討するべきなのです。
解任の流れ
(1)株主総会の招集を決定する
解任をするためには、株主総会によって決議する必要があります。
株式会社における、取締役の選任及び解任権限を持つ機関は株主総会ですから、解任のためにはまず株主総会を招集します。
株主総会の招集は、代表取締役の名義で招集通知の書面を送ります。株主総会の招集通知の発送日と株主総会の開催日の間は、非公開会社なら7日以上は空けましょう。(公開会社の場合は14日となります。)
(2)株主総会の決議
役員解任の株主総会決議では、議決権の過半数を持って決定します。
議決権の過半数の賛成となれば取締役を解任することができるので、それ以上の議決権を操作できるのであれば、解任は確実になります。
(3)取締役の解任に関する登記申請
取締役の解任が決定となったら、登記事項に変更が生じるため、役員変更登記の申請が必要になります。
「株主総会議事録」と「株主リスト」、代理人による申請の場合は「委任状」の添付が必要になります。株主総会議事録は、取締役が解任された事実を証明するために添付する必要があるのです。
解任請求
もし、議決権の過半数を操作できない場合には、株主総会での解任決議が否決される可能性もあります。
ただし、否決された場合でも役員の「解任請求」を提訴することが可能です。ただし、条件として解任したい役員が不正しる場合や、重大な法令もしくは定款違反があった場合に限ります。
AとBの二人で会社を立ち上げたが、Aが60%の株式を保有している場合などは、Bは株主総会の決議でAを解任できないので、解任請求することとなります。この場合、Bはその株主総会から30日以内に解任の訴えを提起します。
まとめ
説明した通り、会社側が役員を解任する場合には、株主総会の招集と出席した株主の議決権の過半数の賛成が必要になります。これだけ見るとかなりの手間がかかります。
繰り返しますが、会社設立時の役員数と選任は慎重に検討した上で決めましょう。
勢いだけで決めてしまうと後々後悔します。
同様に設立後に役員の数を増やし、任期を延ばす場合もよくよく検討した上で定款を変更するようにしてください。
執筆者紹介
- 東京都町田市生まれ、神奈川県相模原市在住。
慶應義塾大学商学部卒
大学卒業後、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)勤務を経て
平成27年独立開業。
相模原地域を中心に、多くの企業の会社設立を支援。多数の講演実績。
出版書籍に
「会社と家族を守る事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46」
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