初期費用を抑えられる「バーチャルオフィス」での起業。登記は可能でも、業種によっては許認可が下りず、創業融資や法人口座の審査で不利になるケースもあります。失敗しないための実務上の注意点を税理士が解説します。
初期費用を抑える「バーチャルオフィス」という選択肢
「自宅の住所を会社の登記簿に載せたくない」
「相模原や町田駅周辺の一等地の住所を使って、対外的な信用度を上げたい」
これから会社設立をお考えの方の中で、実際のワークスペースを持たず、住所や電話番号だけを借りる「バーチャルオフィス」を活用した起業が増加しています。
店舗や大きな機材を必要としないIT業やコンサルティング業であれば、毎月の高いテナント家賃を払うことなく初期費用を劇的に抑えられるため、非常に合理的な選択肢です。
法務局での株式会社や合同会社の設立登記そのものは、バーチャルオフィスの住所でも全く問題なく完了します。しかし、安易に登記先を決めてしまうと、後になって「事業の許可が下りない」「創業融資の審査が進まない」といった想定外の壁に直面するリスクが潜んでいます。今回は実務の現場から、バーチャルオフィス起業を成功させるための具体的な知識をお伝えします。
会社設立は可能。ただし「許認可」が必要な業種は要注意
会社設立の手続きが完了しても、いざ事業を行う上で行政機関からの「許認可」が必要な業種の場合は細心の注意が必要です。
バーチャルオフィスの多くは「物理的な専用スペース」を持たないため、行政からの許認可要件を満たせず、ビジネス自体をスタートできないという致命的な事態に陥ります。具体的にどのような判断基準でNGとなるのか、代表的な業種を見てみましょう。
- 人材派遣業(労働者派遣事業):許可要件として「事業所の面積がおおむね20平方メートル以上あること」に加え、「独立した入り口があり、他社と完全に区分された施錠可能な空間」が厳格に求められます。不特定多数が共有するバーチャルオフィスでは、個人情報保護の観点からもこの基準をクリアできません。
- 宅地建物取引業(不動産業):「継続的に業務を行うことができる独立した物理的実態」と「来客用の専用スペース」が必須要件となります。机一つだけのシェアオフィスや、住所貸しのみのバーチャルオフィスでは都道府県知事からの免許が下りません。
- 古物商(リサイクルショップなど):買い取った品物を安全に保管・管理するための物理的な営業所が必要です。実態のない住所貸しでは、管轄の警察署からの許可が下りないケースがほとんどです。
ご自身の事業モデルが許認可を必要とするか、物件を契約する前に必ず専門家や管轄の役所へ確認しておきましょう。
■参照ページ:労働者派遣事業関係|厚生労働省
創業融資の審査における「活動拠点」の重要性
金融機関からの資金調達という面でも、バーチャルオフィスは物理的な実態が見えにくいため、「創業融資」の審査において実際の活動拠点の確認がシビアに行われます。
日本政策金融公庫や地元の信用金庫の融資担当者は、「この会社は実際にはどこで、どのように売上を作っているのか」を重視します。バーチャルオフィスを利用していること自体が即否決の理由になるわけではありません。大切なのは、「登記上の住所はここですが、実際の作業は海老名の自宅(または座間の別のシェアオフィス等)で行っています」と、事業の実態を明確に説明できることです。
活動拠点が自宅であるならば、業務委託契約書や実際の取引記録、詳細な事業計画書を持参し、「真っ当に事業を行っている実態」を客観的な資料で証明することで、金融機関の疑念を晴らすことが可能です。
■関連記事:会社設立後「法人口座」の審査落ちを防ぐ3つの開設対策
自宅兼事務所を「法人の経費」にするための実務
自宅(賃貸など)で作業する場合、個人事業主時代の「家事按分」と同じ感覚で処理しようとするのは危険です。法人と個人は「別の人格」のため、生活費を単純に面積按分して法人の経費にはできません。主に次の2つの方法で適正に運用する必要があります。
① 個人と法人で「賃貸借契約」を結ぶ方法
会社が役員から事業用スペースを借り、役員へ「地代家賃」を支払います。
【地代家賃のシミュレーション】
・自宅の月額家賃:100,000円
・自宅の総床面積:50平方メートル
・事業専用に使っている部屋の面積:15平方メートル【計算式】
15㎡(事業用) ÷ 50㎡(総面積) = 0.3(30%)
100,000円(家賃) × 30% = 30,000円
会社は月3万円を経費計上できますが、役員個人には「不動産所得」が発生し、個人の確定申告が必要になります。また、税務調査に備えて個人・法人間での「賃貸借契約書」や、使用部分を明示した間取り図の保管が必須です。
②「役員社宅制度(借上げ社宅)」を活用する方法
会社名義で物件を契約して大家へ家賃全額を支払い、役員の給与から「一定の家賃相当額」を徴収する方法です。賃貸物件の場合、社内規程を整備して社宅扱いにする方が、結果的に大きな節税メリットを得られるケースが多く見られます。
どちらを選ぶにせよ、単純な家事按分とはルールが異なり、事前の契約・規程整備が重要です。
起業時のバックオフィス整備は専門家にお任せください
バーチャルオフィスを活用したスマートな起業は魅力的ですが、通常のオフィス起業よりも入念な準備と「見せ方の工夫」が求められます。何かが起きてから対応するとなると、ビジネスの立ち上がりが数ヶ月遅れてしまうこともあります。
相模原・町田・座間・海老名会社設立支援センターでは、会社設立の手続き代行はもちろん、審査に通る事業計画書の作成から創業融資まで、税理士と社会保険労務士の視点からワンストップで対応しております。
クラウド会計ソフトの導入を含めた創業期のバックオフィス構築は、実績豊富な当事務所にお任せください。起業に関する不安や疑問がありましたら、一人で抱え込まず、ぜひ初回無料相談をご利用ください。
【Q&A】バーチャルオフィスでの起業に関するよくある質問
メガバンクや地方銀行に比べると、店舗を持たないネット銀行(GMOあおぞらネット銀行や住信SBIネット銀行など)は、オンライン完結で審査が進むため、新設法人やバーチャルオフィス利用者でも比較的開設しやすい傾向にあります。ただし、事業実態を示す資料(ホームページや契約書など)が必須である点は同じです。
可能です。ただし、本店所在地を変更する場合、法務局へ「本店移転登記」の申請が必要となり、登録免許税(管轄内移転なら3万円、管轄外移転なら6万円)や司法書士への報酬といった余計な費用が発生します。設立時の住所選びは長期的な視点で慎重に検討しましょう。
インボイスに記載する住所は、原則として法人登記されている本店所在地(バーチャルオフィスの住所)となります。ただし、商品の返品や郵便物の物理的な受け取りが頻繁に発生する事業の場合は、実務上の混乱を避けるため、実際の活動拠点(自宅等)の住所も併記するなどの対応をおすすめします。
執筆者紹介

- 税理士眞﨑正剛事務所 社会保険労務士法人眞﨑正剛事務所
- 東京都町田市生まれ、神奈川県相模原市在住。
慶應義塾大学商学部卒
大学卒業後、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)勤務を経て
平成27年独立開業。
相模原地域を中心に、多くの企業の会社設立を支援。多数の講演実績。
出版書籍に
「会社と家族を守る事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46」
最新の投稿
会社設立コラム2026年9月21日【相模原で会社設立】バーチャルオフィスの会社設立と創業融資の注意点
会社設立コラム2026年8月25日ゼロからの会社設立より有利?「スモールM&A」による独立と創業融資
会社設立コラム2026年8月21日会社設立後「法人口座」の審査落ちを防ぐ3つの開設対策
会社設立コラム2026年7月25日【相模原で会社設立】創業融資の審査を通す「自己資金」の正しい準備方法









