後継者不在の既存店舗や事業を引き継ぐ「スモールM&A」での起業が注目されています。ゼロから会社設立するよりも初期投資を抑えやすい一方、見落としがちな労務リスクや創業融資のコツが存在します。税務と労務の専門家視点で、成功するためのポイントを徹底解説します。
後継者不在の店舗を引き継ぐ「スモールM&A」とは
「長年勤めた業界で独立したいが、内装や設備を一から揃える資金が足りない」
相模原や町田周辺で起業をお考えの方から、こうした資金繰りのご相談をお受けします。近年、既存の事業を買い取って独立する「スモールM&A」という選択肢が注目されています。
全国の中小企業でM&A件数が増加しており、全国的に後継者不在は課題となっています。この問題は地方都市にとっても決して他人事ではなく、相模原・町田・座間・海老名でも、事業承継に関する悩みを抱えている事業者は少なくありません。
スモールM&Aのメリットは、店舗の内装や機材、既存の顧客リストを活用できることです。設備や顧客基盤を活用できる場合、ゼロからの起業より立ち上げ負担を抑えられる可能性があります。
M&Aの主な手法として、以下の2つがあります。
- 株式譲渡:会社自体を引き継ぐ手法。資産・負債・契約関係・許認可・雇用は原則として会社に残ったまま引き継がれる。
- 事業譲渡:必要な事業(資産・負債・契約・雇用など)を個別に選別して引き継ぐ手法。
従業員を引き継ぐ際に気をつけるべき「労務リスク」
機材や顧客を引き継げるのは大きな強みですが、注意しなければならないのが「人(従業員)」の引き継ぎです。
株式譲渡では会社が雇用主のまま存続する一方、事業譲渡で労働契約を譲受会社へ承継する場合は、従業員本人の承諾が必要になります。
取引手法や契約内容によっては、前経営者時代の潜在的な債務を負担する可能性があるため、未払い賃金、勤怠記録、社会保険加入状況を事前にしっかり調査することが不可欠です。タイムカードの記録が曖昧だったり、残業代の扱いが不透明なまま引き継ぐと、見えない「労務リスク」まで背負い込んでしまう危険性があります。
「前の社長の時はこうだった」と、口約束だけのルールが横行している現場も少なくありません。既存の労働条件を確認し、変更が必要な場合は労働者と十分に協議して合意するようにしてください。
■参照ページ:労働契約(契約の締結、労働条件の変更、解雇等)|厚生労働省
■関連記事:創業直後に注意すべき、労務管理について解説
買収資金の調達と「事業承継・集約・活性化支援資金」
スモールM&Aで事業を買い取るための資金調達には、日本政策金融公庫の「事業承継・集約・活性化支援資金」などの制度を活用できる場合があります。買収価格だけでなく、事業を引き継いだ後の設備投資や運転資金も事業計画に含めておくことがポイントです。
通常の会社設立と異なるのは、事業計画書に「前経営者の過去の実績(決算書など)」を組み込める点です。過去実績と改善計画を数字で示すことで、返済可能性を金融機関に説明しやすくなります。
対象企業が赤字の場合、「安く買えるチャンス」と即断するのは危険です。改善可能な一時的要因か、構造的な赤字かを調査し、改善後の収支と追加資金を保守的に見積もる必要があります。
融資を相談するタイミングとしては、買収候補と概算金額が見えた段階で早めに金融機関へ相談し、最終契約には融資実行を前提とする条件を設けるか専門家と検討することをおすすめします。
■関連記事:【町田・相模原で起業】審査に通る創業融資の事業計画書4つのポイント
買収後100日間のPMIも計画する
事業を引き継ぐ契約が成立して終わりではありません。買収後に組織や業務を統合するプロセス(PMI)をいかにスムーズに進めるかが、その後の経営を左右します。
会計システム、勤怠管理、給与計算、社会保険の手続き、取引先管理、社内の権限設定など、統合すべき項目は多岐にわたります。異なるルールで動いていた組織を一つにまとめるには、従業員の不安を取り除きつつ、迅速にバックオフィス環境を整備する計画を立てておくことが求められます。
税務と労務の事前調査(デューデリジェンス)
スモールM&Aを成功させるカギは、契約書にサインをする前の「事前調査(デューデリジェンス)」に尽きます。
■関連記事:相続・事業承継スモールM&A支援
財務・税務・労務・法務・事業など、各分野の調査項目を分けて徹底的に洗い出します。事業譲渡であれば必要な資産・契約・債務を選別しやすく、簿外債務等のリスクを比較的限定しやすいという特徴はありますが、完全なリスク遮断は難しいため専門家の目が欠かせません。
税理士・社会保険労務士の両資格を持つ代表が在籍する当事務所では、税務(お金)と労務(人)の両面からリスクを適正に評価します。法務面は弁護士、許認可は行政書士等と必要に応じて連携し、安全な事業引き継ぎをサポートいたします。
「近所のお店を買い取って起業したい」「譲渡の話がきているがリスクを知りたい」といったお悩みがあれば、ぜひ相模原・町田・座間・海老名会社設立支援センターの初回無料相談をご利用ください。地域で永続する企業を目指すあなたの挑戦を、専門家の視点から力強く後押しいたします。
【Q&A】スモールM&Aでの起業に関するよくある質問
株式譲渡は会社自体を引き継ぐため、会社の資産・負債や契約関係は原則として会社に残ります。事業譲渡は、引き継ぐ資産、契約、債務などを個別に定める手法です。
自動ではありません。事業譲渡で労働契約を譲受会社へ移す場合は、対象となる従業員本人の承諾が必要です。労働条件を示し、十分な時間を設けて協議しましょう。
決算書、申告書、試算表、納税状況、借入金、主要契約、許認可に加え、労働契約書、賃金台帳、勤怠記録、社会保険の加入状況などを確認します。
事業承継・集約・活性化支援資金などが候補になります。ただし、申込者や資金使途、事業承継計画、返済可能性の審査があるため、契約前の早い段階で相談してください。
執筆者紹介

- 税理士眞﨑正剛事務所 社会保険労務士法人眞﨑正剛事務所
- 東京都町田市生まれ、神奈川県相模原市在住。
慶應義塾大学商学部卒
大学卒業後、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)勤務を経て
平成27年独立開業。
相模原地域を中心に、多くの企業の会社設立を支援。多数の講演実績。
出版書籍に
「会社と家族を守る事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46」
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