会社設立コラム

神奈川県が行う、創業支援融資や創業支援プロジェクトを紹介

神奈川県では、創業・企業を支援するための優遇金利制度や補助金制度などが用意されています。

創業全般を対象にしているものもありますし、業種や業態が指定されているものもあります。また、一部の業種によっては、ベンチャー企業を対象にした補助金プロジェクトも展開されているので、該当する業種の方はチェックしておくといいでしょう。

今回は、神奈川県が取り組んでいる、各種企業向け制度について紹介します。

創業支援融資(神奈川県制度)

神奈川県が県として行っている、創業する中小企業の融資を補助する制度です。基本的には、融資を受ける際の金利が優遇されます。

対象

1.現在事業を行っていない創業前の個人で、次のいずれかに該当する人

・1カ月以内に、新たに個人事業を創業する人
・2カ月以内に、新たに法人事業(NPO法人、医療法人を除く)を創業する人

2.事業を行なっていない個人が事業を開始し、創業後5年以内である

3.分社化を予定している、または分社化後5年を経過していない会社(中小企業に限る)

※なお、2については、個人事業主から法人成りをした人も含まれます。その場合は、個人で事業を開始した時から数えて5年以内が対象です。

創業支援融資の「創業特例」

神奈川県の創業融資にて独自に設けられている制度で、創業支援機関等で経営指導を受けるなどした場合に適用されます。この特例を利用すると、金利や保証料がさらに低くなります。

4.融資申込前に創業支援機関(KIP、商工会、商工会議所等)の経営指導を受け、かつ、融資実行後概ね2回以上の経営指導を受ける方

5.国が認定した市町村の特定創業支援等事業を利用した方(創業前の場合は、創業の6カ月前から利用可)
※法人成りした中小企業については、これが対象外になります。

融資の条件

資金使途運転資金・設備資金
融資限度額3,500万円
融資利率(固定金利)年1.8%以内
創業特例の場合は年1.6%以内
融資期間1年超10年以内
返済方法分割返済(1年以内の据置き可※1
担保不要
保証人原則として法人代表者以外の連帯保証人は不要
(経営者保証を不要とすることも可能)
信用保証料率(※2)0.40%(経営者保証不要の場合0.60%)
創業特例 0.00%(経営者保証不要の場合0.20%)

※1 「経営者保証を不要」とする要件を満たし、申込金融機関においてプロパー融資残高があるか創業支援融資と同時にプロパー融資を実行する場合、据置期間は3年以内に延長されます

※2 信用保証料率は県による補助及び神奈川県信用保証協会による割引後の料率です。

なお、経営者保証が不要である場合は、原則として法人設立から3年目と5年目に、ガバナンス体制の整備に関するチェックが行われます。

申し込み方法

必要書類を揃え、本融資制度を取り扱っている金融機関に持参します。

金融機関は主にメガバンク、神奈川県をメイン拠点とする銀行・信金・信用組合・商工組合中央金庫などです。

神奈川県のベンチャー支援について

神奈川県では、県として、次のようなベンチャー支援制度も行なっています。

HATSU起業家支援プログラム

神奈川県の各都市で起業家や創業準備者、また既に事業を行なっている地域企業が集まり、コミュニティを形成することで、起業家同士のつながりを生み出す取り組みです。

鎌倉から始まり、厚木市内、小田原市内と展開しており、県としてはいずれ県内全体に浸透させたいという思惑があります。

取り組み内容

1. 起業準備者に対する相談対応(起業全般に関する相談窓口の設置)

2.起業家コミュニティの形成を目的とした交流機会の創出(交流会、勉強会などを開催)

3.有望な起業準備者に対する集中支援(チャレンジャー制度)

「チャレンジャー制度」は、コンテスト形式で開催されており、優れた事業モデルを提示した創業準備者には、弁護士や税理士、先輩起業家(研究者、マーケター)からの手厚い支援が集中的に受けられるというものです。

この制度に採択された創業準備者はこれまでに115名、そのうち87名が事業化を実現しています。

KSAP(かながわ・スタートアップ・アクセラレーション・プログラム)

社会課題の解決を使命としているスタートアップ企業や、創業準備者に対して、マーケティングやビジネスモデルの磨き上げなどを行うプログラムです。

ビジネス課題に対してどう向き合ったらいいか分からない、事業をどうデザインするべきか分からない、といった初歩的な悩みから、事業規模や形態をどうすべきか、資金調達をどうすべきか、といった創業直前の悩み事まで、専門家に相談することができます。

「個別伴走型」となっており、希望者にはコーチングなども提供されますが、人数に限りがあり、令和6年度の受付は終了しています。

かながわベンチャー限定クラウドファンディング「かなエール」

神奈川県の企業が、既存のクラウドファンディングサービスを利用して資金集めをする際に、「かなエール」を通じて申し込むことで、サービス利用手数料が割引かれるというものです。また、神奈川県が広報の支援も行なってくれます。

対象となるクラウドファンディングサービスは、「CAMPFIRE」「ENjiNE(神奈川県運営)」「CF Angels」「FUNDINNO」です。

まとめ

神奈川県で直接受けられる融資制度は1つに限られていますが、そのほか、経営相談や経営者とのコミュニティ作りを推進するプログラムが多数用意されています。

このほか、今までに紹介してきた各市区町村による融資制度もあります。自分に必要な施策を見極めて、利用することをおすすめします。

特に専門性が高い、節税対策や資金調達については、適宜アドバイスを受けながら進めていくことで、安定的な経営につながると思います。

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執筆者紹介

眞崎 正剛
眞崎 正剛税理士眞﨑正剛事務所 社会保険労務士法人眞﨑正剛事務所
東京都町田市生まれ、神奈川県相模原市在住。

慶應義塾大学商学部卒
大学卒業後、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)勤務を経て
平成27年独立開業。
相模原地域を中心に、多くの企業の会社設立を支援。多数の講演実績。
出版書籍に
「会社と家族を守る事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46」