- 事業承継のために 会社設立 した方が良いのか? -
少子高齢化に伴って、事業承継問題が注目されていますが、事業を渡す側が個人か法人かでその方法も変わってきます。
法人は、登記によって法律上の人格が認められているので、経営者が変わろうが、その人格は同一です。対して、個人事業主においては、事業承継前と後では人格は同じではないということになります。事業内容が同一であったとしても、納税義務者が変わってしまいます。
この別人格になるという点を踏まえれば、事業承継では個人事業主よりも法人の方が引継ぎはしやすいと言えます。
承継方法の違い
冒頭でも述べましたが、法人は登記によって法律上の人格が認められます。経営者が代わっても経営者の持っている株式や出資金を後継者が承継すれば、経営権や財産権は包括的に引き継がれます。
個人事業主は、個人が主体となっており、経営権も財産権も、事業主個人に属していることが大半です。個人からの事業を承継するには、新たな事業主に必要な資産を引き継がせ、新しく事業を開業することになります。
個人事業主の場合、事業を承継させた側が廃業手続きを、事業を承継した側は開業手続きが必要です。
法人の方が事業承継上で有利な理由
(1)法人であれば口座が凍結されない
もし先代の事業主(個人)が亡くなった場合、先代の名義の銀行口座は凍結され、名義変更が完了するまで自由に引き下ろしができなくなります。
個人の場合は、自身の給与と事業用のお金を振り込む口座のいずれも個人名義の口座となります。そのため、亡くなった段階で(現実的には個人の死を金融機関が把握した時)口座が凍結され、入出金ができなくなるのです。そうなれば、事業継続に必要な入出金を行うのに時間がかかってしまいます。
法人の場合は、会社という別の人格を有しているので、経営者が亡くなっても口座が利用できなくなるわけではありません。
(2)事業用資産の継承も楽
法人の事業承継では、企業資産は経営者個人ではなく法人としての財産ですから、経営者が交代しても事業用資産の引き継ぎはしなくて良いのです。必要なのは、自社株の引き継ぎ等です。
対して、個人の場合だと資産は全て個人のものなので、事業承継に際して全ての事業用資産を後継者に引き継ぐ手続きをしなければなりません。
また、個人事業主の場合、事業のために使用していた不動産、動産なども個人の所有物になるため、相続や贈与の対象になり、個別に資産を評価する必要があります。
(3)許認可等も引き継げる
法人では各種の契約を法人格で締結しているので、代表者が変わっても問題ありませんが、個人事業主の場合、個人として結んでいるので、名義上の問題から再締結の手間が発生します。
さらに、個人の場合、建設業や労働者派遣など許認可が必要な事業では、事業引継ぎ後に許認可を再取得する流れになりますが、法人であれば引き継ぎが可能です。
(4)売買にも有利
後継者がいない場合は事業を売却するケースもあります。
個人事業の場合、経営者自身が商品価値としてみなされることが多いですが、法人であれば社長の個人的価値の他にも、集団としての価値も評価されます。
この集団としての価値がある部分に会社としての利点があるのです。
個人事業を買い取った場合には、新規に事業を起こすのと同じ労力が必要となりますが、会社を買った場合は会社のブランドなど多方面の価値を得られるのです。
他にもある法人のメリット
個人よりも法人の方が事業承継に有利ですが、法人化には他にも様々なメリットがあります。
(1)節税の幅が広がる
個人事業主の場合、必要経費の幅も狭く、損失の繰越も3年と短いのです。
その点、法人化を行えば、従業員として雇っている家族への給料を経費にできるのはもちろん、損失も10年間繰越をして相殺できます。経営者自身も役員報酬として給与を受け取ることになるので、給与所得控除によって節税効果を高めることができます。
このように会社設立によって、節税の幅はかなり広がるのです。
(2)信用度も上がる
法人は本店所在地や設立年月日・目的・資本金・役員などの重要事項が、登記によって公示されるので、社会的信用が上がります。
大きい企業では取引条件として法人格を有することを条件にしている場合が多いですし、融資や投資家からの出資など、資金調達面でも法人であった方が有利に働きます。
まとめ
事業承継を考えるなら、法人化の方が有利です。法人化をするにはタイミングも重要ですが、ある程度、個人事業として所得が大きくなってきているのであれば、税金負担なども考えて法人成りをするとよいでしょう。
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執筆者紹介
- 東京都町田市生まれ、神奈川県相模原市在住。
慶應義塾大学商学部卒
大学卒業後、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)勤務を経て
平成27年独立開業。
相模原地域を中心に、多くの企業の会社設立を支援。多数の講演実績。
出版書籍に
「会社と家族を守る事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46」
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